05
翌朝、沖田さんから返事が来ていた。
"猿飛うるせえ"と。
なんでさっちゃんだとわかったのだろう。不思議に思いながらすみませんでしたと送ればすぐに"不快な思いをしたから飯奢れ"ときた。
奢ります、奢りますとも。私の幼馴染がやってくれた数々の無礼をお許しいただけるならば。
このことをさっちゃんに報告すべく、さっちゃんの部屋の窓からお邪魔した。普通幼馴染といえど、二階の窓から人がやってきたら驚くものだけど、私とさっちゃんは昔から行ったり来たりしているので今更驚くこともない。あ、さっちゃんは窓の鍵を閉めていても何故か入ってこれるのだけど。
「ふぅん、デートの約束を取り付けたと」
「デートじゃないよ、ご飯行くの」
「まあよかったじゃない、私のおかげね」
「…そうかも、ありがとう」
「いいのよ、なまえと恋話するのも久しぶりで嬉しいもの」
ね?と首を傾げ笑ったさっちゃんは可愛かった。私もさっちゃんくらい可愛ければ、当たって砕けろ的な発想でガンガン攻められるんだけどなぁ。
沖田さんとご飯を食べに行くことになったのと伝えれば、さっちゃんは嬉しそうにお洒落しないとと化粧ポーチを取り出してくれた。
「何時にどこ待ち合わせ?」
「教えてもこっそりついてきたりしない?」
「しないわよ、どうしてするのよ」
「だってさっちゃんなんだもん」
「そんなに暇じゃないわ。今日は銀さんが新台で仕事終わりにそのままパチンコに行くから私も行かないといけないのよ」
それって暇じゃないの?と疑問に思ったけど、さっちゃんは至極真面目な顔をして言っているから私はあえて聞かなかった。
「8時に駅前で待ち合わせの予定だよ」
「デートじゃないの」
「違うってば」
「駅前で待ち合わせだなんて、デート以外の何があるの?」
きゃーデートよデート!!と叫び始めたさっちゃんの口を思いっきり手で塞ぐ。恥ずかしい。それにデートじゃないっ。
お互い休みだということもあり、沖田さんと約束した時間までさっちゃん家で語り合うことになった。銀さんという方のプロフィールを復習したり、銀さんという方の主なスケジュールを確認したり、銀さんという方の…とにかく銀さんについてさっちゃんが永遠と話していた。
「そろそろ支度したほうがいいんじゃないかしら?」
時刻を確認すればもう6時になろうとしている。だいぶ長い間、銀さんについて話していたんだなぁ。
「そうだね、じゃあ帰って支度する」
「男はみんなミニスカワンピが好きよ」
「持ってないよ」
「あら、それなら貸してあげるわ」
「あー大丈夫だよ、ありがとう」
来た時のように窓から部屋へと戻る。
ミニスカワンピかぁ…クローゼットから唯一持ってるワンピースを引っ張り出し合わせてみるがやはりさっちゃんと違って似合わなかった。
何度も着替え、結局少しだけいつもより女の子らしい格好で落ち着いた。
あ、シャワー浴びて化粧もしなければ。
沖田さんとまた今日も会えると思えば、勝手に顔がにやけてしまった。
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