04




いつも通り銀ちゃんを送り出し、掃除機をかけていればピンポーンとインターホンが鳴った。こんな時間に来客なんて郵便物がある時くらいだと思いつつ玄関へ向かえば沖田と土方がいた。

「え…なに?」
「よっ。桂から聞いた。同棲してるらしいじゃねえか」

邪魔すんぞと入ってきた土方と沖田にちょっと待ってと制止しても無駄だった。一体全体学生二人組がなにしにやってきたのだ。

「就活も終わっちまって暇してたんだよ」
「そうそう、元教え子と淫交してる担任の家にでも遊びに行ってやろうかなってなァ」
「銀ちゃん仕事だよ?」

掃除機を片付けお茶を出せば沖田が酒ありやせんか?とか言い出した。まだ朝9時である。大学生って、朝から呑めるもんなの?朝からお酒なんて1日の行動に制限をかけるものじゃないのだろうか。

「銀八は何時に帰ってくんだ?」
「さあ?日によってまちまちだからなぁ。日付変わる前には帰ってくると思うよ」
「うっわ、先公ってそんなに働くのかよ」
「うーん…」

銀ちゃんの場合は仕事の後スることがあるからだということは伏せておいた。土方がじゃあお前昼間なにしてんだ?というから何もしてないことを伝えればヒモかよとからかわれる。私だって働きたいとは思うんだけどね。

「銀ちゃんが花嫁修業として家事やってればいいって」
「うっわ、なんだそれ、愛されてんな」
「はは、そうだね」

よかったわという土方の隣で沖田が「でもアンタ高杉が好きだったでしょう」と言う。それに土方は「は?まじ?」と大袈裟すぎるような反応を示した。

「好きだった、のかな?わからないけど」
「まさかアレで好きじゃなかったってんで?あんなべったり一緒にいたくせに」
「そうだったっけ?」

好きか嫌いかだとしたら好きだったと思うけど、だからって付き合うとかそういう話が出たことはなかったしあのなんとも言えない距離が好きだった気がする。

「まあでも幸せならいいんじゃねえの?もう今はお前ら連絡も取ってねえんだろ?」
「あぁまあ、うん」
「でも高杉は多分まだ好きだと思いやすけど?」
「はっ!?えっ…」
「え?振ったわけじゃねえんですかィ?」

がしゃんとコップを落としてしまった。振った?私が?

「総悟それどういう意味だよ」
「おき、た、なにそれ…」
「あー…なんか俺まずいこと言っちまった気が…」
「お前、高杉とそんなに仲よかったっけか?」
「酒飲んでAV鑑賞した時にまあその流れでそういう話したことがありやして」
「お前ら一緒にAV鑑賞なんかしてたのかよ」
「銀八から借りるとこ見たんでねィ、俺も一緒に観せてもらいやした」
「…へえ。仲いいんだな」
「まあ、そうかも知れやせん」

とりあえず酒飲もうぜーと沖田が冷蔵庫を開けた。勝手に開けないでよとかこんな時間からお酒なんてだとかそんなことは言えず、ただただ高杉が私を好きだという話だけが頭をぐるぐると回った。

「でもまあ銀八と高杉が仲悪くなったのも頷けるっつーか、そういうことかみたいな感じはするよな」
「え?あの二人仲悪いの?」
「は?知らねえの?今はどうか知らねえけど、卒業するまで全然会話してなかったろ」
「えっ、そうなの?」

お酒が回ってきた頃、土方がポロリと漏らした。すると沖田がにやにやとしながら「あれだろィ、銀八が"みょうじって泣かせて縋らせたい感じするよな"とか言って高杉が切れたって話だろィあれ面白かったよなァ」と言った。
そして「銀八って、生徒に手を出してるとかそういう噂絶えなかったよな。まあ本当に手を出されたやつ目の前に言うことじゃねえけど」と男の子たちの間では有名だったらしい話を聞かされた。
私も知ってる、坂田先生とキスしちゃったとかいう噂を耳にしたことくらいあった。


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