03




ただいまぁと玄関を開けたところで銀ちゃんはいなかった。迎えに行くと言ってた割には電話に出なかったのでそのまま帰ってきたのだった。なんとなく予想はしていたけれど、電話には出ると思ってたなぁ。その辺器用な人だから。
一旦帰ってきてから出掛けたらしく脱ぎ捨てられているスーツを拾いながらリビングへと向かった。
しばらくしてかけ直しの電話がかかってきて、銀ちゃんは「悪い、今日服部先生いたろ?あいつに誘われて飲んじまってる。もう帰るけどタクシー拾えるか?」と言った。だから大丈夫だよ楽しんできてねと言ったのだ。それが嘘か本当かなんてもうどっちでもいい。

「たーだいまっ、なまえちゃんおいで」
「おかえりー…って、だいぶ飲んだね?」
「服部の奢り奢り!人の金で飲む酒ってなーんであんなに美味えんだろーな」

なまえちゃんおかえりのチューしてよ、と抱きついてきた銀ちゃんはべろべろ千鳥足だ。よく一人で帰って来れたねと言えばタクシーだったからなと自慢気な顔をされた。

「そっちは?楽しかった?」
「うん、楽しかったよ。あーでも銀ちゃんと付き合ってんのバレちゃった」
「へえ。どうせヅラ辺りがペロッたんだろ」

別に隠すことでもねえしいいんじゃねえ?と銀ちゃんがキスをしてくる。

「んっ、銀ちゃ、」
「んー?高杉どんな面してた?」
「えっ…」

高杉って。どうしてそんなに高杉に拘るの?
銀ちゃんはニヤニヤしながらもう一度キスをした。唇を舌でねじ開け、ぬるっとした感触と共に煙草の苦味が口内は入ってくる。私も呑んでいるけどそれでも、銀ちゃんのキスはアルコールの味がした。長い長いそのキスに息が苦しくなる。ぼうっと熱に侵された身体にアルコールの匂いが混ざり、芯から火照った。

「あーあ、俺も見たかったなァ、高杉の顔」
「っはぁはぁ、高杉、別にそんなっ」
「普通だった?今頃家でイライラしてんじゃねえの?」
「どうして?」
「だってあいつ、今でもなまえちゃんが好きなんだぜ」
「えっ、それっ、んんっ!」

銀ちゃんと高杉が仲良かったのはなんとなく知ってたけど、今でも連絡を取っているのだろうか?唇で塞がれてしまい続く言葉は出なかった。移された唾液が飲み込みきれず口の端から垂れ落ちる。
スカートを捲り上げ、パンツの横から指を滑りこました銀ちゃんは嬉しそうにクチュリと入り口を撫でた。

「んっ!」
「やっぱ呑んでると濡れるのも早えな。今すぐ入れてえけど先に舐めてよ」

頭を捕まれそのまま下へと押される。そこにはすでに存在を主張させる銀ちゃん自身がいた。早く早くとグリグリ顔を自分の股へ押し付ける銀ちゃんの顔は欲情していると分かるほど目がギラついている。

「奥まで咥えてっていつも言ってるでしょうがっ」
「んんっ、ゲホッ」
「あぁーいいね、苦しそうな顔も。高杉はこんな顔知らねえんだぜ?」

嬉しそうに笑う銀ちゃんと奥まで加えさせられて頭を抑えられてる私。苦しいからこれはあまり好きじゃない。好きじゃないけど、銀ちゃんはお酒を飲んで酔っ払うといつもこれをさせたがる。
私の頭を掴み前後に動かしながら、自分も腰を振る。はぁはぁと息遣いが荒くなってきた頃、銀ちゃんはゆっくりと私の口を離した。

「もう入れていい?」
「あっ、待ってここ玄か、」
「あんまでけえ声出すなよ?外に聞こえんから」

そう言って棚に手をつけさせお尻を強調させるような格好にしたかと思えば慣らしてもいないそこへ一気に自身をねじ込んだ。

「あぁっん!銀ちゃ、っはっ、あっ」
「声でかいって、バレちゃうよ?」
「あっ、だってんん、あっぅん、ん」

最初からそんな激しくしなくてもいいのに、ラストスパートかのように銀ちゃんは腰を振る。私の身体を知り尽くしているから、いいところだけを集中的に突かれ声は抑えきれないほど出てしまう。慣らされていないはずなのに、すっぽり奥まで受け入れられるようになっていた。

「声抑えろよ、それともみんなに聞いて欲しいわけ?」
「ちがっあぁ、やだっやめ、あん」
「でもこっちはやめないでって」
「言ってないんっアッ、待って、ほっん、に」
「あーやべ、そろそろ一発目はイけるわ」
「えっ、いっぱ、あっあっ」
「なまえちゃんはまだでしょ、大丈夫大丈夫、まだまだ時間あるしっ」

そう言った銀ちゃんは私の中で欲を吐き出した。そのまま抜かれることなく緩々と腰を動かす。

「もう高杉なんか見させねえよ、俺だけ見てろって」

真っ白に堕ちていくその頭で、それを銀ちゃんが言えるの?と思った。毎晩送られてくるあのメールは誰からなの?


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