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銀ちゃんと終わった、と思うあの日から高杉は警戒を強くしたらしい。一人で家から出ることはダメになって、携帯は新しいものに変わった。しょっちゅう来てくれていた沖田と土方も来なくなり、高杉とだけの時間が増えていく。

「なまえ」

低い声は私を安心させる。キスをされながら、これで良かったのだと自分に言い聞かせた。好きでもない女を抱いていたこともあったと、正直に話してくれた高杉から他の女の人の気配はない。毎日私を安心させてくれる。私の嫌なことはしないし、相変わらず優しい。
なのに、どうしてだろう。これで良かったのかと不安になる。私の新しい携帯は、高杉以外から鳴らされることはない。

「んっ、あ、高杉、跡恥ずかしい」

首筋に顔を埋められ、首をすくめれば顎を抑えられた。ちくっとした痛みが短い間隔で少しずつ場所を変える。高杉のつける跡は消えることなく、毎日私に紅くはっきりと存在を主張している。

「恥ずかしくねえだろ、誰も見てねえよ」

長く優しい前戯は、今日も私の意識を曖昧にしていった。中をかき混ぜるように動く指に声を掠らせながら喘ぐ。何度目か分からないほど身体を痙攣させた私は、高杉の腕を無理やり引き抜いた。硬く膨れ上がった突起は敏感になり過ぎていて痛いくらいだ。

「もっむり、あっ、やぅ」

太ももをゆっくり撫でられ腰が浮く。私の全身は高杉によって力を入れることさえままならないほど、火照っていた。ゆっくりとキスをしながら自身を挿れた高杉が「もう誰にも触らせねえ」と言う。アッアッと声を上げながらこれで良かったのだと首を縦に振った。

「あっ、たかすっ、あんっんんっ」

ねっとりと熱い舌が口内を動く。唇を離されれば名残惜しそうに銀色の糸が二人を繋いだ。
銀ちゃんと顔を合わせたあの日から、高杉は避妊をしなくなった。まだ子どもは、と口籠もった私に口元を上げた高杉は「遅かれ早かれ欲しいだろ」と言っていた。付き合いこそそれなりにあるかも知れないが付き合ってまだ一ヶ月くらいしか経っていないのに、高杉のその考えに少し違和感を抱いてしまった。

「なまえっ、腰揺らせ」
「やっ、んんっあ、あっあっ、高杉っ、あっ」

下腹部を押さえつけ、奥へ奥へと腰を動かす高杉。焦らされた中は逃さんばかりに高杉へと絡みつく。擦れて熱くて、本当におかしくなってしまいそうだ。快楽からか視界がぼやけて高杉が二重に見える。掠れる自分の声が可愛げなくて嫌になる。銀ちゃんも性欲が強いと思っていたけど、高杉の方が強いかも知れない。私を毎晩求める高杉からの愛は少しだけ、ほんの少しだけ怖くなった。

「あー…やべえ、出る」

額に唇を押し付けた高杉の動きがより一層早くなって、私の腰をガッチリと押さえつけた。打ち付けられる腰からパンパンと乾いた音がする。首がガクガクするほど揺さぶられ、奥をズンっと突かれれば高杉がグッと爪を立てた。その直後ドサリと体重を預けられ達したのだと理解する。ドクドクと早い鼓動が直に伝わる気がして、高杉の髪の毛に指を絡める。ん、と顔を上げた高杉が私の顔を覗き込んだ。

「もう、絶対、誰にもやらねえ」

そう言ってゆっくり抜かれたソコからドロリとどちらのものかわからないものが垂れた。シーツに垂れたそれが冷たくなって、肌に触れる。

「なあ、次の休日、指輪でも見に行くか」
「…ん、そうだね」

幸せだ。だって私が望んだことだから。幸せなのだ。だって銀ちゃんを傷つけて手に入れた私の居場所だから。
高杉は私のことを心配してるだけだ。その証拠に私が嫌がることは何一つしない。毎日安心をくれて、毎日愛してくれて、毎日私を喜ばせてくれる。
何も不安なんてないのに、怖くて怖くて仕方ない。

「子どもが出来たら、引っ越すか。誰にも邪魔されず誰にも脅かされねえ」

な?と撫でられた頭は心地よい。
私の世界にはもう高杉しかいない。いなくなった。

「高杉、もう寝ようか」
「晋助だろ?」

そう言った高杉の顔は少し銀ちゃんと被って見えた。

end

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