遥かなる光を越えて旅立て




ミーンミーン…

蝉が鳴く夏空の下(もと)で三夜はとある場所にある墓を訪れていた。

その場所は木が生い茂っている為、夏の強い日差しは当たらない。

三夜はそっと墓石に刻まれた名を指先でなぞった。

「貴方は今、此処には居ないんですよね。」

わざわざ貴方が居ない時に来る私も酔狂なのかもしれませんが。

そう言葉を紡ぎながら指先を離した。

辺りには三夜が添えた線香の煙が立ち込めている。

その隣には備え物として持ってきた向日葵が己を主張するように咲き誇っていた。

「そう言いながらも貴方は必ずこの時期に此処に来ますよね。」

後ろでその様子を見ていた久脩が言う。

その言葉に三夜は思わず苦笑いをした。

「確かにそうですね。」

この時期、亡くなった人間の霊は自分の家に帰ってくる。

だからお墓参りに来ても霊は自分の家に帰っているため、此処にはいない。

それなのに何故か毎年この時期に此処に来てしまう自分が居た。

「…にしても、世の中も変わりましたね。昔は茄子と胡瓜で死者の霊を送り迎えしましたが、今は早く帰ってこれるように飛行機や新幹線の時代ですからねぇ…」

時代を感じます、と久脩は言葉を続けしみじみと言った。

この時代は私達が生き抜けた動乱の時代からおよそ四百年の歳月が流れた世。

何の因果か三夜と久脩は前世というものを持ったまま此処にいる。

二人が出会ったのも些細な偶然からだった。

あの時代を生き抜けた人間は意外と身近に転生していた。

皆、三夜と久脩のように前世の記憶など持ち合わせていなかったが。

恐らく、二人かその記憶を持ったまま生まれたのはただ霊力が高かったという理由故だろう。

「さてと、そろそろ帰るとしましょうか?」

「……そうですね。」

またね、三成。

三夜はその言葉を最後に残し久脩と共に帰路についた。



(ただいまー)

((遅いぞ、三夜))

(あはは…ごめん、ごめん。だから説教は勘弁ね、三成。)



あとがき
お盆ということで突発的に書きたくなったので、書いてみました。お盆の内容は地域によって違います。時期も違ったりしますが…。飛行機ネタはガチネタです(笑)昔、曾祖父をお迎えした時のことが印象に残っていたので書いてみました。このネタを書きたかった故に現代IFにしたんです( ̄∀ ̄)最後の所で分かると思いますが三成も前世を覚えておらず転生した人間の一人です。主人公は、また三成と姉弟だったわけです。現代ゆえに最後は主人公の丁寧語口調が無かったり…お墓参りの際は戦国時代の三夜だったという裏設定。何故か番外編を書くと絡みが久脩さんになってしまう。何故だっっ!!とまぁ、長いあとがきを此処まで読んでくださりありがとうございました。

20120821



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