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お隣さん-01



近々、勤務地を変更されることになったのでこの米花市へと私は引っ越してきた。仕事内容としては、表向きは宮内庁勤務となっている。が、実際の仕事は和仁親王の側付きである。今上天皇のお加減があまり良くなく、最近は親王である和仁様に以前よりも多くの公務が回ってくるようになったので、京で働いていた私へもお声がかかったのである。引っ越しの荷物は午後届く予定なので、先にスーツケース片手に住む予定のマンションへと来ていた。

新居の前で鍵を探すが、なかなかカバンの中から出てこないため、他の荷物を置き、ドアの前で鞄をひっくり返していると不意にガチャ、という音がした。開いたのは右隣りの”お隣さん”だった。

「…おや?新しいお隣さんですか。僕は隣に住む安室透と言います。」

今時、こういったマンションで近所付き合いが濃いということはあまりないので挨拶されたことに若干驚いた。

「ご丁寧にありがとうございます。今日越してきた安倍三夜と申します。あ、宜しければこれをどうぞ…」

引っ越しの品は久脩さんが用意してくれた今治タオルである。

「こちらこそ、ご丁寧にどうも。何か困ったことがあったら、お気軽に声をかけてくださいね。では」

そう言って、お隣さんである安室透さんはエレベーターホールへと向かって行った。職業を聞かなかったが、社会人、であろうか…?誰かさんに負けず劣らずの年齢不詳さである。



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