「何故、私が付き合わなければいけないのです?」

三夜は風間の猪口に酒を注ぎながら言った。

「別に良いだろう。」

ふっ、と口元に笑みを浮かべ返された。

良くないと思ったが、あえてそれは口に出さなかった。

口に出すと後々ねちねちと言われそうだ。

「付き合わせてしまい申し訳ありません、三夜。」

「九寿さんが謝る必要はありません。」

三夜はそう言い溜息をついた。

いきなり風間に引っ張られ、連れてこられたのは島原だったのだ。

狐の面はしておらず、高い位置で髪を括った三夜は風間に負けず劣らずの美男子だった。

芸者などから熱い視線を向けられていた。

幸い、風間が芸者をとらなかった為、現在はそのような視線を向けられることは無い。

「三夜はあの幕府の狗をどう見る?」

不意に風間が口を開いた。

「今の時代の腑抜けた浪士達よりはマシですが、本物の武士(もののふ)にはほど遠いかと…。」

三夜は出された料理に手を出しつつ言った。

本当の武士(もののふ)は戦国の世を駆け抜けた儚くも生き様を歴史に刻み込む人間のことだと三夜は思った。

それは実際にその世を生き抜けば肌に感じて分かる。
平安の世は争いがあれど、あそこまで規模の大きなものは無かった。

「やはりそう思うか…。」

そう言いぐびっと酒を飲む風間。

「お銚子のお酒、無くなってしまいましたね。」

どんだけ飲むんだ、と思いつつ空になったお銚子を手に三夜は席を立った。

「何処に行く。」

そう言い、手首を風間に掴まれた。

ひょっとして、もう酔いが回っていたりするのだろうか。

「新しいお酒を貰ってくるだけですよ。」

「なら、私が…」

「いえ、九寿さんは折角ですし楽しんでください。普段から大変でしょうし…。」

天霧が行こうとするのをやんわりと制し、三夜は座敷を後にした。

――――――

「貴方、そこで何を?」

「あ、あのっ…」

三夜が追加のお銚子を持って来ると一人の芸者が部屋の前に居た。

芸者は三夜に声をかけられ、慌てて此方を見た。

その顔には覚えがあった。

いや、正確には気配に…

確か、天王山で土方という副長の後ろに居た……鬼の女の子。

「お銚子なら今持って来たので必要ないですよ?」

「そ、そうですか。」

彼女は明らかに動揺した様子でその場を後にした。

彼女はこの角屋に先入していたのだろうか。

――――――
あとがき

千鶴ちゃん遭遇篇
なんか中途半端な終わり方という←
本当は雪華録の内容を濃く書きたかったけど連載じゃないのであまり長く書けないという事情上で短くなりました(笑)
三夜は男装するとそこいらの男性よりイケメンですww
ベースが三成ですからね!


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