真冬の蕾
元旦から数えて七回目の朝がやってきた。
「久脩さん、朝餉が出来ました。」
三夜は粥の入った器を置いた。
その様子に少し驚いたように久脩は目を見開いた。
「これは……七草粥、ですか?」
その言葉に三夜はこくり、と頷いた。
「和仁様から下賜されたんです。芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、繁縷(はこべら)、仏の座、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)の七草だそうです。」
久脩さんは物珍しそうに蓮華(れんげ)で掬い口にした。
私もこのような七草粥を作るのは初めてだった。
味付けは塩のみである。
本来、七草粥とは餅がゆ(望がゆ)と呼ばれ米、粟、黍(きび)、稗(ひえ)、みの、胡麻、小豆の七種の穀物を用いて作る。
だが一般官人は米と小豆を入れたお粥が朝廷によりふるわれるのだ。
「素朴な味が身体に沁み渡りますね。」
「典薬寮が明の七草を日本でこの時期に取れる山菜を元に発案したそうです。」
冬は寒いおかげで、葉のものがあまり育たない。それを補うためにこの七草粥で滋養をつけよう、という話らしい。
とにかく、体に悪いものではないと…それだけは言えるだろう。
「なるほど……ご馳走様です。」
こう綺麗に食べて頂けると嬉しいものだ。
「お粗末様です。」
久脩さんの食べる姿をぼんやりと見ながら思ったのだが、確か和仁様は御形が嫌いだったのではないか。