ほら吹きの語る真実






福島殿を見送った後に私たちは赤雨城を目指して歩いていた。
すると途中から草木が一本も生えていない場所に出た。
先程の場所でも温泉が湧いていたようだが、此処の比ではない。
地面自体が熱を持っており、草鞋(わらじ)を通して体に熱さが伝わってくる。

「く、なんという熱さ!体力が持ちませぬ。一刻も早く抜けましょうぞ。」

鷹丸のその言葉を皮切りに侍の姿をした異形二人が現れた。
侍姿以外に弓兵が居るためになかなか前に進むことが出来ない。

「大丈夫か、悠月。」

鷹丸殿が侍二人を相手にしている間に三夜と清正が周りの雑魚を倒していた。
だが、いかせん数が多い。
弓兵がうつ矢には青雨城で飛んできた光の球体が矢尻を起点に発生しており、当たることが許されない。

「えぇ。清正こそ大丈夫ですか?」

お互いに背を合わせながら敵を返り討ちにしていた。

「問題ない。」

そんなやりとりをしていた時、鷹丸はついに侍の異形を倒した。

「く、扉が開かぬ。どうすれば…」

いつもなら自動で我々を先へ誘うように扉が開くのだが、それが起こらない。

「とにかく付近を調べてみるしかねーな。」

清正がそう言い、別れて探そうとした時、鷹丸の声が響いた。

「突然異形が湧いたでござる!」

確かに地面から湧いたように侍が一体増えた。
このまま増殖されると対処しきれなくなる可能性が高い。

『木遁で道を作るか?』

今まで黙って後ろで隠形していた六合がそう言った。
しかし、神将の姿をなるべく知られたくない。

「……何か鳴き声が聞こえませんか?」

その時、ピィーっという鳴き声が辺りに響いた。
すると、東の崖の上空で鷹が三居(さんもと)いた。

「いやはや鷹が現れるとは…」

羽を開くと人以上の大きさがあるせいか、大人一人を軽々と向こう側に運んでいた。

「あのまま居たら異形に囲まれていたかもしれねーな。」

清正の言う通りだ。
渡った向こう側にはまた例の光があった。
光を抜けると女性の叫び声が突き抜けた。

「いやぁぁぁあ!どなたかっ…」

その声に清正と三夜は眉を寄せた。

「むっ!民が襲われているようでござる。急ぎ救援せねば!」

声の聞こえた方へ行くと侍一体が居たが、清正がばっさりと斬り捨てた。
この顔触れだと怖いもの無しな気がしてきた。倒すとが開き、中央に梵字が浮いている空間に出た。
梵字ということは何か祀られてるのだろうか?
触れてみるとバチリ、と弾かれた。
結界が張ってあるのだろうか。
六合が心配そうに見ていたのに、大丈夫と返し道を抜けると侍二人に襲われている旅装束に身を包んだ女性が居た。

「まあ、あなたがたは…!」

女性を異形から離すように鷹丸殿が間合いにはいる。

「お下がりくだされ、ここは拙者たちが…」

女性の護衛は私がする形となった。
全てが終わるのは本の一瞬のことだった。

「本当に、危ないところをありがとうございました。私、あやめと申します。この近くの村に行くところでした。お三人は?」

異形を清正達が倒した後に、あやめ殿は私の後ろから顔を出した。
名前を聞かれ順々と名乗った。
前へ出るあやめ殿と本の一瞬だけ目があったような気がした。
そして、その時に何か悪寒が走った。

「まあ、鷹丸様と、加藤清正様、土御門悠月様とおっしゃるのですね。あら、不思議な宝玉をお持ちですね。」

鷹丸殿があやめ殿に惚気た一瞬、鷹丸殿の懐から宝玉が顔を覗かせた。

「いや、これは…。」

慌てて、繕おうとする鷹丸殿に対して清正が馬鹿が…と溜息をつく。

「いえ、なんでもないんです。ただ、この地には、古い宝玉の伝説があってそれを思い出したものですから。」

伝説というのは、やはり私が読んだ書物に載っていたやつのことだろうか。

「ご、ごめんなさい。おかしなことを言ってしまって。」

その様子に今度はあやめ殿が困ったような顔をした。

「あやめ殿が気にすることはごいませんよ。よければ、私たちが村までお送りしましょうか?」

いくら異形を退けたと言っても、やつらは湧いて出てくるだろう。
しかし、彼女はがんなに是とは言わなかった。

「いえ、もう大丈夫です。本当にありがとうございました。」

彼女を見送ると鷹丸はやはり先程の言葉が気になっているようだった。

「各城に納められた宝玉とその伝説の宝玉とは、関係があるのでござろうか?」


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