絡繰仕掛の罠の森






光を抜けて最初に見えたのは巨大な岩の壁だった。
壁の前に武将らしき身体付きの良い男性がいた。
突然現れた私達に目を見開いた。

「うげっっ!化け物っ!誰だてめぇ。」

片手に武器の槍らしきものを構えそう言った。鷹丸殿が我々は敵ではない、と動揺するのとは反対に清正殿は驚いて言葉がでないようだった。

「なっ…正則!?」

「……清正か!?」

どうやら二人は知り合いらしい。

「清正のお知り合いですか?」

三夜が感動の再会をしているらしい二人がどのような間柄なのか気になる。

「あぁ。俺と同じで秀吉様の子飼いの武将だ。」

「俺はぁ、福島正則って言うんだ。よろしくなっ!」

バシッと鷹丸と私の背を叩いた。
あまりの力強さにお面越しで伝わらないが思わずしかめっ面をしてしまう。

「この馬鹿が。叩きすぎなんだよ。」

それに気付いた清正が福島殿を止めた。

「にしても、なんでお前が此処にいるんだ?」

鷹丸殿が異形が怖くて進めなかったのでござるな!と隣で言っていた。流石に太閤殿の子飼いの武将なのだからそんなことはないだろうと横目で見ていたが案外図星だったらしい。

「こら、馬鹿にすんな。あんなの全然怖くねぇー。おねね様に言われてこのへんのこと調べててよー。どんだけ化け物がいるのか数えなくちゃいけねぇんだけど…」

おねね様、ということは太閤殿の正室のあのおねね様のことなのだろうか。

「けど…おおおっ、そーよ。何匹いたか忘れちまったじゃねぇか。」

「人のせいにするな、馬鹿が。」

呆れたように清正がそう言った。
だが、私達に驚いて忘れてしまったのも事実なのだろう。

「なら手伝って差し上げましょう。」

それは、あまりにも彼が可哀想だからそう申し出ると目を輝かせながらすごい勢いで迫ってきた。
それを清正が阻んだ。

「お、お前良い奴だな。じゃあ此処で待ってるから頼むな。」

福島殿がそう言うと待っていましたとばかりに進路を阻んでいた巨大な岩が左右に動いたのだ。
岩は迷路のように配置されていて閉まったり開いたりを繰り返している。
これは、何者かによる術か何かがかかっているのではないだろうか。


「未来のこの地は既にムラサメによって壊滅していた。」

ぽつりと鷹丸殿が呟いた。
ムラサメの被害はそれほど甚大だったのか。
異形の数を数える作業自体は予定以上に早く終わった。
奴らは人の形をしているが、あまり知恵はないらしく…私達が固まっていたところに強襲してきたのだ。
無論、天下無双の力を持つ武将がそろっているものだから結果は歴然としていた。

「おおおおっ、助かったぜ。ありがとよっ!」

そう言い、部下を率いて福島殿は去っていた。
まるで大嵐のようだったと思っていると鷹丸殿が口を開いた。

「綾御前殿、福島正則殿、そして加藤清正殿、悠月殿…この時代の侍は皆、国を思い、民を思う、心優しき武人でござるな。」

感慨深くそう言う鷹丸殿の居た時代はこのような世の中ではなかったのだろうか。

「秀吉様が統一した世を俺たちが守らないといけないからな。」

清正がそう言う。
その言葉には今まで積み重ねられた様々な思いが含まれているのだろう。


「実は清正殿と悠月殿と出会う少し前、貴殿のような勇敢な面々と戦いをともにしたことがござってな。よき思い出でござる…。いずれ、その話をお聞かせしよう。」

何処か思いを馳せたようにいう鷹丸殿は私達に会うまでに他の武将のお世話になっていたということだろう。


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