さよならセレストブルー






謎の侍を追うべく清正と三夜は洞窟を歩いていた。

「なんか、寒くなってきましたね。」

先程から奥に進むにつれて気温が下がっているようだ。

「あぁ、だがもうすぐ出口だ。」

清正が指を指す方向には確かに外から日差しが入り込んで来ていた。

「ひぃ、ひぃ、な、なんだよ、この化け物!」

そんな叫びと同時に外の世界に踏み出した。

「……なんだよ、これは。」

そこでは、またしても村人が鎧を纏った異形に襲われていた。

「槍でつついたぐらいじゃ、びくともしねぇ」

だが、驚くのはそれだけではない。

現在の季節は秋だというのに目の前でしんしんと降り積もる雪。

その余りにも奇妙な現象に二人は一瞬時を忘れたが、すぐに村人の叫び声で我に戻る。

「俺たちじゃ、歯がたたねぇ…。だ、だれか!」

そして村人が此方に気付いた。

「お、お侍様!助けてくだせぇ。お侍様のすんげえ技なら、化け物も…!」

凄い技?

三夜は村人のその言葉に疑問を持つ。

「多分、無双奥義のことだろう。通常の攻撃が効かないとなると厄介だな。」

そう言いながら清正は異形の足軽を倒していくが、いかせん数が多い。

「……そうですね。」

三夜も厄介なことには同意する。

無双奥義……聞いたことない名詞だ。

「ひっ、あの化け物にやられると体が凍っちまう!ど、どうすりゃあ…あいつに弱点はないのかねぇ」

体が凍る、って一体…?

大方、周りの異形は清正が倒した。

三夜は攻撃に特化している訳では無いので、己を襲ってきたモノのみを破魔刀に霊力を纏わせ斬る。

故に一発で異形を倒すことが出来る。

三夜がそうしながら村人を一カ所に集めたちょうどその時、清正の声が辺りに響いた。

「狩るぜ!」

その声と同時に清正は跳躍して己の鎌を地面に打ち付けると、。

一発で異形の鎧武者を倒してしまった。

その技は無双奥義・皆伝と人々に呼ばれている。

「すげぇ…お侍様の腕なら化け物も目じゃねぇ。」

村人がその様子を見て感嘆の声を上げた。

確かに凄い。

でも清正は普段この技を使って人を殺しているということにも繋がる。

戦国乱世だから、その一言で片付く事柄だが陰陽師という仕事上、三夜は人を“殺す”という行為に嫌悪を示す。

現在倒している相手が異形だと分かっているため三夜は顔色を変えずに、奴らを倒しているがそれが人間だった場合話は別だ。

「そういや、さっきも一人で戦うお侍様を見たなぁ
この先に向かったみたいだが、無事だろうか。」

村人はその侍が向かったと思われる方向に目を向けた。そこにはあの青白い光が輝いていた。

「その侍って…」

「多分、俺らが探している侍だろう。」

二人は前回同様、その光に足を踏み入れた。

今度二人が出たのは桜咲き乱れる春の地域だった

「ムラサメ、この太刀で再び果たしてくれる!」

そんな声が何処からか聞こえてきた。

三夜と清正は顔を見合わせた。

その声こそ二人が探し求めた侍のモノではないか。

「洞窟の方から聞こえてきたな。」

「そうですね。」

洞窟の奥の方に入ると異形の群れに遭遇した。

親玉である武将の後ろに外へ出る道があった。

だが、木枠が嵌め込まれていて行くことが出来ない。

「こいつらを倒せば進めるのか?」

「多分、そうでしょうね。」

「なら話は早いな。」

清正は鎌を構え直した。

「此処は私がやりますよ。」

清正の一歩前に出て彼を制し言った。

「お前がか?」

「はい。」

そう言い懐から札を出した。

「必神火帝、万魔拱服!」

符が四散し、同時に凄まじい霊力か広がった。

「う゛ぁぁぁああ!!」

これぞ正に瞬殺という名に相応しく異形達は叫び声を上げながら滅せられた。

「なっ……すごいな。」

その光景に思わず清正は言葉を無くした。

異形が倒れたと同時に木枠が消えた。

「これで進めますね。」

「そうだな。」

外に出ると異形武将と戦う若武者の姿が見えた。

すかさず清正が周りの異形を倒し始めた。

「貴殿は一体?どなたか存ぜぬが感謝致す!」

青年が言う。

「そいつらは、普通の攻撃があまり効かない!」

清正がバサリと斬り伏せ言った。

「普通の攻撃が効かない?此処は渾身のあの技をやるしか…」

そういい刀を構えた。

「いざっ!」

手を己の刀に翳し炎を纏わせる。

そして勢いよく敵に振りかざすと炎の輪が異形を呑み込んだ。

「救援、かたじけない。ひとまずここを抜けましょう!」

彼はそう言い二人を誘導した。

今までの鬱蒼とした空の下ではなく澄み切った青空のもとへ出た。

「かたじけない。拙者は鷹丸と申す。貴殿らは?」

「俺は加藤清正だ。」

「私は悠月と申します。」

三夜はペコリとお辞儀をした。

「ほう、加藤殿と悠月殿、でござるか。」

「あの武士達は一体なんなんだ。」

清正が今までの謎を口にした。

「…何?あの武士たちは何なのかと?いや、貴殿を巻き込む訳にはまいらぬ。
どうか、お帰りくだされ。拙者はこれにて。ご助力の恩義、忘れませぬ。」

鷹丸はそう捲くし立て話すと止める間もなく何処かへ走り抜けてしまった。

二人は余りの速さに目を点にしたまま、その場に立ち尽くした。

『三夜!!!追わなくて良いのか?』

六合のその言葉に三夜は、はっとして清正に声をかけた

「清正、止める間もなく行ってしまいましたが・・・。」

その言葉に清正もしばらく停止していたが意識を取り戻すとすぐさま言った。

「追うぞ!」

こうして、二人は謎の侍鷹丸を追うのだった。


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