飛び続ける青い鳥を探して






「久脩さん、ということで暫く留守にします。」

御上から伝えられたことをそのまま久脩に三夜は伝えた。

「分かりました。……三夜の料理が暫く食べられないと思うと少し残念ですが。」

明らかに落胆するような表情を見せた。

何時からこの人は私にこのような表情を見せるようになったのか、覚えてはいないが最初からでは無かったはずだ。

「それと、ずっと伝えられなかったのですが……」

三夜はこの際、自分の素性を全て久脩に話そうと思っていた。

和仁が知っているということは、いつ久脩に伝わってもおかしくない。

「もしかして、石田のことでしょうか?」

三夜が改めて話を切り出した為、久脩も一瞬強張ったがすぐに思い出したかのようにその言葉を口にした。

久脩の言葉に三夜は勿論、目を見開いた。

「ご存知だったのですか?」

「えぇ…御上に報告したのも私ですからね。」

そう言い、何故三夜の素性を知るにあたったのかを語りだした。

切欠はやはり、豊臣秀吉が御所に訪れた際のこと…

久脩はその時、その一団を御上の元に連れて行くのが仕事だった。

そこで見たのが石田三成という男だった。

三夜と瓜二つの顔――――そこで式神を使い調べさせたのだそうだ。

三夜が齢十二の時に結婚が嫌で家出したことなどが出てきたそうだ。

「……そうですか、今まで黙っていてすみませんでした。」

「いえ、三夜の気持ちが分からぬ訳ではありませんから。これからも、うちに居て構いません。此処は三夜の家でもありますからね。」

そう言い久脩は微笑んだ。

その言葉に三夜は思わず目頭が熱くなる。

「……、ありがとうございます。」

―――――――

「待ち合わせに指定された場所は此処ですが……」

空気が淀んでますね、と言葉を続けた。

異変の起きている青雨城がある村の入り口に三夜は居た。

『妖気の質が今までと全然違う。』

六合が三夜の隣に立ち身構えるように言った。

今回は白虎が留守番である。

留守番と言っても、今回は三夜がいない間の和仁の護衛だが。

そんな三夜に背後から声をかける人間がいた。

「あんたが今回の怪奇事件に派遣された陰陽師とやらか?」

「えぇ。」

三夜は返事をし、ゆっくりと後ろに振り返った。

そこに居たのは銀髪に鎌をもった特徴のある姿の青年だった。

「俺は秀吉様の子飼いの武将、加藤清正だ。」

相手は名乗った後に眉をよせた。

それもそうだろう。

今の私は狐の面に直衣(のうし)というなんとも怪しい格好をしているのだから。

「私はご存知の通り、陰陽師の…」

そこで言葉を切る。

今、清正殿は子飼いと言った。

つまりは我が弟、三成の職場仲間ということだ。

そんな仲間に名乗った場合、素性が割れる可能性は高い。

ならば…

「悠月と申します。顔を見せられず申し訳ありません。しかし、これも御上からの指示ですのでご理解をお願いします。」

「……あぁ。」

清正殿には悪いが偽名を使わせて頂こう。

それに一応、現在の性別は男ということに表向きはなっているというの理由もある。

まぁ、表向きであって三夜の性別を知る者は多い。

「清正殿は太閤殿からどのように指示されましたか?」

村の入り口というのにやたら木が多い。

六合は隣に居るが、常人である清正殿に彼の姿は見えない。

「俺は秀吉様からはあんたの指示に従うようにうけている。」

清正殿は私が下っ端の陰陽師だと思っているのか?

胡散臭さげな視線を感じる。

まぁ、陰陽寮頭と名乗るつもりもないが。

「……そうですか。なら、最初は被害にあっている村に向かうべきですね。」

こうして二人は被害が多い村へと歩みを進めたのだった。



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