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「…今、君、空から降ってきたよね?」

ドサッという音共に草原の上にその身が投げ出された。何が何だか分からない。私に話しかけてきた男性の部下と思われる人間が、殿、危のうござる…と言っているのが聞こえた。男性は馬に乗っており、女性が相乗りをしていた。明治維新が起こり10年ほど年月が経っており、今や時代錯誤である。それなのに、髷……?

そもそも、この状況を回想するならば私が万屋として引き受けた仕事まで戻る必要があるだろう。今回引き受けたのは夜な夜な暴れてる九十九髪を鎮めてほしいというものだった。九十九髪の器は刀であり、とりあえず観察をしようとして刀を手に持ったとこまでは記憶にあるのだが。まるで、これでは私が明治に来た時のデジャヴではないか。

「〜〜ねぇ、君大丈夫?惚けてるみたいだけど。」

「え、あ…はい、大丈夫です。」

気が付いたら先ほど声をかけてきた男性が馬上から降り、とても近くに居た。手を差し出し、座り込んだ私を立たせてくれた。その後ろから此方を伺うように綺麗な女性がいる。更に後方で部下が慌てて此方によってくるのが見えた。

「よく見たら君が着てるの袴じゃん…成人式?」

その言葉にエッとなった。
このハイカラな袴を見て成人式、なんていえるのは未来の人間だけのはずである。あいた口が塞がらないまま静観してると、先ほどの部下が追いついたようで。

「信長様、いつも申してますが明らかに怪しいやからにご自身から向かわないで下さい!」

またしても、その言葉に言葉をなくす。先ほどから驚きの連続である。

「…のぶながさま?」

「そ、俺は織田信長。君は?」

とてもフランクなこの男性が第六天魔王と呼ばれたようには見えない。

「…津守咲耶、です。」

反射的に最近名乗ることが板についた津守の名が口から出た。

「咲耶ちゃんね、咲耶ちゃんは行くとこあるの?」

「…ないです、けど」

そもそも状況把握さえ正しく出来ているか分からない私に行く宛などある訳がない。

「なら、俺のとこに来ない?」

そう言って手を差し伸べた織田信長にデジャヴを感じる。そう、翠さんに拾って貰った時だ。


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