「友達」?なんて陳腐な言葉だろう



講義を羊皮紙にカリカリと書く音がやけに響く。それもそうか…魔法史の教鞭をとるカスバート・ビンズ教授の授業は淡々と単調に教科書を読むことで有名で、それゆえに生徒の眠りを誘う。私は歴史という教科が一番好き故に、そうは感じないが。講義を真面目に受けない人に講義内容を教えて、と言われるが正直人数が多すぎるので私は対応していない。というか日本語でノートをとっているから貸したとしても読めないのだが。そういえば、先生はゴーストだからこんなにも歴史に詳しいのだろうか。と爆睡してるハッフルパフの友人、ルイスを眺めながら思う。




「あ〜〜、よく寝た!サクはよくあの先生の授業寝れずに受けれるよな。」

ルイスは大きな欠伸をしながら伸びをした。

「歴史があるから今があるんじゃない、」

呆れながらその姿を見る。

「まぁ、確かにそうなんだが。で、サクは今回でた魔法史のレポート書くの手伝ってくれよー。」

「はいはい、全く今更じゃない。」

「やったー!サク大好き!」

そういってルイスは抱きついてきた。
側から見たら私が他人に課題を教えるといえのは異様な行為なのだろうが。普段ならそんな甘えはひと蹴りするが、ルイスにはしない…いや、出来るわけないんだ。

「戦況はずいぶん悪いみたいだな。」

離れたと思ったルイスは急に真剣な表情になり新聞を差し出した。それは英紙新聞だ。

「えぇ、でも国内では未だに日本が勝っていると報道されているみたい。」

「とんだ報道規制だな。」

彼は純血でありながら、マグル界の情勢にとても詳しい稀有な存在だ。スリザリンなんかは顕著にそうだが、魔法族はマグルの情勢に疎い…いや、そもそも関心がないといっても過言ではない。だから、ホグワーツに入学してから日本の情勢が全く分からなかった。そして次第に実家からの連絡も滞りどうなってるか分からず途方に暮れていた頃に彼に出会ったのだ。当時は何故彼がそんなに詳しいのか不思議だった。でも、今なら彼が何故そんなに詳しいか分かる。彼が現イギリス首相の息子…ルイス=チャーチルだから。

「このまま勝てると思ってるのは本当一握りよ。陸軍の暴走がなければこんな悲惨な事態にはならなかったかもしれない。」

今、母国である日本は国家総動員法により全ての人々が戦争への協力を強いられている。ホグワーツに入学してから五年の間に祖父は死に、父は徴兵された。そしてルイスからの申し出に甘んじた私は長期休暇をルイスの屋敷で過ごしている。英国から戻ってきたとなれば非国民扱いされかねないからだ。このまま魔法界に就職するならば、もしかしたら私が日本の土を二度と踏むことはないのかもしれない。

「そうかもしれないな。」

「……ルイスはどうして私に此処までしてくれるの?」

幾度したか分からない問いをまた口にする。

「んー?」

ルイスは紅茶を口にしながらお茶うけのクッキーをリスのように頬張っていた。

「何度目だよ、その質問。俺がお前のこと好きだからって言ってんだろ?それにサクが居てくれればレポート手伝ってくれるし。」

それに丹狐を触れるしな…!そういった彼は丹狐をわしゃわしゃと撫でていた。そうだった、彼はふわふわしたものが好きだったのだ。

そんな平凡な1日が今日も去り行く
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