PARAMETRIC LANDSCAPE[7/9]

ジュンヤはもうグッタリとしてて、一応足は動いてるけど、多分もう半分以上意識は飛んでる。だから、こいつが生命の次に大事にしているベースやエフェクターの類も、今はすっぽりと俺の背中に収まっていた。


「うん、なんかテンション上がってさ。ちょっとやり過ぎたな」


そんなことを言って適当にごまかす。特別なあの場所なら、あれぐらいのことは許される気がしたんだ。


「ケント。お前の下宿先、こっから近いよな。ジュンヤを泊めてやってくれよ」


ナツの言葉に、ドキリと心臓が跳ね上がる。


「へ? なんで? ナツとジュンヤは近所なんだから、一緒に帰ればいいよね」


オサムの言い分はそっくりそのまま俺の言い分でもあった。


「この状態で一緒に電車に乗れるか? うちまでタクシーで帰ったら一体幾らかかると思ってるんだよ」


そう言いながら立ち止まり手を上げて、ナツは空車のプレートを付けたタクシーをとめる。


「ほら、頼むぞ」


妙な笑顔を向けられた上に押し込むように後部座席に乗せられて、俺は泥酔したジュンヤと帰ることになってしまった。






1000円札で釣りがくるぐらいの運賃を払ってタクシーを降りた後、俺はジュンヤを抱え込みながらハイツのエントランスをくぐり、自分の部屋まで連れていく。細身だと言っても脱力した男を支えて歩くのは一苦労だ。1階に住んでいてよかったとつくづく思う。

鍵を開けて部屋に入り、とりあえずベッドまで運んで降ろしてやれば、ジュンヤは小さな呻き声をあげながらうっすらと目を開けた。


「……あ、れ?」


額にはうっすらと汗が滲み、ほんのりと色気を放つ。ライブの最中によく見せる、匂い立つような艶っぽさだ。


「ここ……ケントんち?」


「ああ、そうだよ。この酔っ払い」


俺はそのきれいな顔を覗き込みながら軽く悪態をつく。普段なら倍にして言い返してくるはずなのに、今はそうじゃなかった。


「うん、そっか」


なぜだか納得している。素直過ぎて、拍子抜けだった。

ぐったりとベッドに横たわったまま、ジュンヤは少しだけ掠れた声で喉の渇きを訴えてきた。


「ケント、水」


大概にしろよ、と思いながらも俺は立ち上がり、キッチンまで行ってグラスに水道水を入れてやる。


「ほら」


グラスを顔の前に出してやれば、眠そうに瞬きをしながら、トロンとした目をこちらに向けてくる。


「無理。起きられない」


- 7 -

bookmark





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -