黒歴史 | ナノ

 私はまだあの子のお姉さんになって1日も経ってない。あの子と知り合って半日しか経ってない。それでも、何とか現状を一応受け入れ、何とか自然にあの子に接している。
 だけど、どうしてもあいつ達とだけは関わりたくない。フタ子はいい。フタ子にデレッデレな立海レギュラーの連中は、もう、最大の黒歴史すぎて見てられない。関わりたくない!

「名前ー!ちょっと待ってよー!!」

 後ろから私を呼ぶ声。今のところあの子は天使だ。私をこの訳のわからない状況に追い込んでる張本人でもあるけど、この世界では私を唯一慕ってくれる天使ちゃん。…昔の私は、王道ではあるけど、天然でちょっとドジで、でも爛漫で明るい夢主が好きだったから。性格は多分保証出来る。はず。

 いくらレギュラーに腹を立てたところで現状が打破出来るわけではない。仕方ないな、と振り返ったと同時に事は起こる。

 あと五段。そんなところで、フタ子は階段から足を踏み外した。五段って意外と高いのよ。なんて頭では冷静に余計なことを考えてるけど、非常に不味い。咄嗟に向かって落ちてくるフタ子に向かって両手を広げる。

「危ねえ!!」

 そこでヒーロー登場。
 まずフタ子の上にいた彼は彼女を素早く抱き止め、そして落下点にいた私までも腕の中に抱き、自分の身体で床からの全ての衝撃を受けた。

「……っ痛ぇ」

 フタ子一人ならもう少し軽かっただろうに。私までも助けるなんて、もう、君は男の中の男だよ。

「ありがとう、助かったよ」

 すぐに立ち上がって、大したことねえよ、だなんて笑うジャッカル氏。かっこよすぎるわ。

「ご、ごめんね!私がドジっちゃったばっかりに!怪我とかしてない?大丈夫?」

 そして、この子はやっぱりドジっ子属性なのである。涙目でうるうるジャッカル氏に更なる攻撃。

「い、いや!お、俺も、いくら事故とはいえ、密着しちまって、えっと……ごめん」

 二人の頬がみるみる染まっていく。あれ、私も彼の腕に抱かれたはずだけど、もう眼中にない感じですかね。

 ラブコメは他所でやれ。いやでも、私も助けてもらったし、まあ、許さないでもないかな。

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