黒歴史 | ナノ

 予想通りというか。やっぱり今日は校門で風紀委員による服装検査の日だった。いつもは比呂士か弦一郎に捕まっちゃうんだけど、対策していたおかげで逆に今日は弦一郎が褒めてくれて。すっごく嬉しかったけど、怒らせてばかりいたことを少し反省。これからはもうちょっと真面目になろう。

 教室の自分の席で荷物を降ろし一息ついたとき、携帯が震えた。メールかな?誰からだろう。
 表示された名前は…あ、赤也。赤也とはテニス部の中でも学年が違うせいか、特に頻繁にメールをやりとりする間柄。だけど、朝練が終わってすぐというは珍しいかも。

『今日何で朝練来なかったんスか!』

 なるほど、そういうことね。ほんのそれだけのことでメールをくれるなんて。可愛い後輩を持ったなあと緩む頬もそのままに返信作業に入る。

『連絡なかった?今日は私……あれ?何でだっけ?』

 何で朝練参加しなかったんだろう?あの事があって精市と一緒に居づらいのもあるけれど、そうじゃなく始めから連絡は入れていたはず。…おかしいな、今日はとりわけ予定もなかったのに。どうしてだろう?

『フタ子センパイのそういうドジなとこも、あと、優しいとこも、全部含めて好きっスよ!』
『ありがとう。私も赤也のこと、大好きだよ』


 更に返信した頃には担任の先生が教室に入って来ていたので、すぐに電源を切った。彼は律義だから次の瞬間には既に返信をくれているんだろうけど、没収は勘弁したいからここは我慢。放課後までその内容はわからないのは残念だなあ。

 それにしても。


 ―私も、大好きだよ。

 これまで簡単に"好き"なんて使っていた。赤也からも、他のみんなからもその言葉を貰って、嬉しくて、幸せな気持ちになる魔法の言葉。だけど、幸村の告白を受けてからは恐ろしい言葉になった。好き。大好き?
 メールだからまだマシだったけれど、次に誰かから同じ言葉を直接言われたとき、私は普通に返せるのかなあ。

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