※一万打企画リクエスト
今野さま「幸村とギスギス」
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幸村という男はとても人気がある。こちらの世界では知らないが、私が元いた世界では、ものすごく人気があった。私も、幸村は綺麗な顔だし、美味しい性格をしているとも思ってはいた。…が、どこが良いのだろう。こちらに来てからつくづく思う。だって、興味のない人間・利用価値もない人間は完全に無視なんだもの。
そう。主に私を…。
それなのに、私は今、何故幸村に話しかけようとしているのか?理由はもちろん、現状打破のため。糸口を見つけるため。それだけ。それ以上は、ない。
「何か用?苗字さん」
初会話。素敵な笑顔ですこと。だけど、さすが、フタ子に向けられるものとはまったく違う微笑み。
しかし、ここで怯んではいられない。
「あんた、フタ子に告白したの?」
幸村の動きがほんのわずかだけ止まった。明らかな動揺。今まで直接的に聞いたことはなかったけれど、やっぱりそうなのかと改めて確認できた。が。
「おまえに関係ないよね」
おお、幸村様様。彼を怒らせるのは恐そうだ。とはいえ、私にしてみれば彼はよく知った中学生のキャラクターであり、弱みを握ってはいても、握られているなんてことはなく。何も恐れることはなかった。トリップというのも案外都合が良いものだな。魔王、なんて揶揄される彼も、私にとってはただの二次元キャラクターでしかない。
「妹が困ってるから聞いただけだよ」
「…へえ、それで勝った気でもいるの?」
何言ってんだこいつ。勝っただの負けだの、中学生ですか。ああ、中学生だっけ。私もこんな身なりだけど、ちゃんと歳を取っているのだなあ、なんて感心してしまうほど…幼稚。
その私の余裕が、余計にお気に召さなかったようで、彼は冷たい目で私を一瞥してから、何も言わずに去って行った。
この世界の彼とは、きっと、まったくと言っていいほど気が合わないのではないだろうか。恐らく、その感覚を幸村自身も感じているから、こうなってしまうのだろう。なるべく彼に関わらないように、問題を解決しようと思った。
31082013 一万打企画
今野さま
「幸村とギスギス」
リクエストありがとうございました!