黒歴史 | ナノ

 ジリリリリリ。頭上でけたたましい音を立てて目覚まし時計のアラームが鳴り響く。毎朝繰り返されるその騒音を、毎度同じく乱暴に制止させる。

「ふああ…」

 最近寝相が悪いのか、寝ている間も酷く肩が凝る。左右に首を傾けるが全然曲がりやしない。ゴキリ。まずい音がした。首鳴らしは癖になってしまっているが、いつか、どこかヤバイ感じの神経を傷付けそうだ。目が悪いのがいけないのか、姿勢が悪いのがいけないのか、はたまた身体の柔軟性のなさか。何分凝り性なのは辛い。
 はあ。洗面台で向かい合う女の目の腫れぼったさ、顔のむくみの酷さよ。学生の頃はまったく抵抗もなかったが、これは人前でスッピンにはなれたものじゃない。最近の中高生はケバケバしいけどさあ、やっぱりスッピンでも気にせず過ごせる若い子が羨ましいよ。いいなあ、中学生に戻って青春がしたいなあ。

 ………………。

 とはいえ酷い夢だった。酷く長い長い夢。正直面白くなかったことはないが、いかんせん昔の黒歴史を思い出してしまったのだから。フタ子って、いつの話よもう、恥ずかしい。あの頃は若かったんだ、別の意味で、と苦笑するしかない。それに。

 良いところで目が覚めてしまったけれど、最後仁王は何と言うつもりだったのかな。やっぱり告白?今はフタ子より名前の方が気になるって?……ううむ。
 イケメンなのは腹が立つし、スカートを捲るのはいくらなんでもないと思う。だけど、私に黙ってついてきてくれて、あれだけずっと協力してもらって。本当、悪い奴ではなかった。
 実はあの頃も立海の中では仁王が一番好きだったんだけどね。あの飄々として掴み所のない、ちょっと意地悪で、たまにヘタレな、だけど仲間想いな仁王。目が覚めてしまったのは少し勿体無かった?

 んん。ただ。自分自身設定が中学生になっているとはいえ、私は心も身体も大人なのだ。立派な大人。いくらなんでも中学生はない。そういう感情が起きない。絶対にない。たぶん、………絶対。
 "夢"という変にリアリティの持った場所が悪かったのもある。そこが"夢の中"という認識はなかったものの、心のどこかには"絶対に現実世界へ帰れる"という自信を持ってしまっていた。だから仁王にも、他の誰にも本気になれなかった。



 ……それもこれも全部夢の話だ。さて、用意も整ったし出勤せねば。さよなら。いってきます。




11112013 おわり

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