いってきます!と勢いだけで告白しに行った赤也を見送り息を吐いた一同。その後ろから静かに声を響かせたのは、
「ふむ…柳生だけでなく赤也まで。お前達はいったい何を企んでいるんだ」
「わー待ってたよ柳!」
今回はその知識の力を私たちに貸してくれよう、柳蓮二くんであります。
「待っていたとは、随分期待されたものだな」
「我らが参謀ぜよー」
そう、柳は恐らく私達の思惑は全てわかっているはずだ。そしてそれがうまくいく確率も。その確率を上げるためになすべき最善の策も。
「フタ子に好きな人を作るなり自覚させるなり何なりして、精市の告白に応えさせる、といったところか」
「その通り!」
この貫禄、この糸目。やはり頼りになる。
「見た限りだとかなり圧されてはいるだろうな」
柳の見立てだとまだ足りない、と。フタ子に対してたくさんの"自覚"への策を打っては来たが、圧倒的に時間が足りない。もう少し時間があれば更なる追い討ちをかけることも出来る。それに、
「もう一晩ほど一人で考える時間が必要だろう」
「でもそうなると、全部パーになるね」
彼女自身にも時間が欲しい。だが、帰宅の途中、幸村と会ってしまえばそれはもうタイムリミット。一晩考える猶予さえないのだ。彼女の記憶はすべて消えてしまう。それじゃあ意味がない。
そこで、ムと、柳の表情が険しくなった。
「全部パー?……いくら抜けているフタ子でも、それはない」
「え?」
「?」
お互いに、意味を相手がわかっていないことが意味わからない、なんて。何故?柳と意思疎通出来ないの?あれ?まさかまさか……。
「もしかして、柳………覚えてないの?」
「はて、一体何の事を言っているのか俺には」
……そんな馬鹿な。
下着を、スカート全開で見られたというのに。恥ずかしさも、いずれ助けになる柳のために忘れようとしたのに。
「参謀にとっては大したインパクトじゃなかったんかのう」
そんな、酷い、酷すぎる。女の子の下着がそう大して印象にも残らないなんて、そんな。真田なら殴られるのと同等(むしろそれ以上)のインパクトだったというのに。
「何?名前は、何で落ち込んでんの?」
「はて」
「女としての魅力のなさに…」
「何でもないから!!」
柳のマル秘ノートに、私の下着についての言及がないことだけは確実に言える、ということで、めでたしめでたし……に出来ない悲しさよ。