黒歴史 | ナノ

 もう一生分驚いた。一生分疲れた。家に帰りたい。元の世界に帰りたい。
 転入生ということで色々質問攻めにも合うし、本当に疲れる。お手洗いと言って逃れてきたところだ。はあ、休息が欲しい。癒しが欲しい。

「っ!?」

 突然後ろから腕を掴まれる。そのままグインと引かれ、そして背中に、私より大きな生温かい感触。こ、これは…。

「朝練来んくて、寂しかったぜよーフタ子」

 頭上から降ってきた声。やばい、この声は聞き覚えある。コート上のペテン師くんではありませんか。……え?は?何だよこの状況は??

「ん?何じゃ?今日はいつになく大人しいのう」

 それから腕が両側から前に回される。だ、抱きしめられてるのですか?コート上のペテン師くんに。も、もう嫌なんですけど。絶望感に抵抗する気も起きない。いえ、実は表向きは無反応という抵抗をしていますけど。 

「ちょっと雅治!名前に何してんのよー!?」

 そのまた背後から救いの女神が現れた。…それもこれもフタ子さんのせいではありますが。まわりまわって私のせいではあるんですが。ようやく私を捕えていた腕が緩む。

「おまんフタ子じゃなかったんか」
「双子の姉の名前だよ!大丈夫だった?雅治変態だから。変なことされてない?」
「誰が変態じゃ」

 女の子を背後からいきなり抱き締める奴が、変態を否定出来るわけないじゃないか。睨んでやってもよかったが、特に仁王とは必要以上に絡んではいけないと第六感が告げたからやめた。仁王の方には目を向けず、大丈夫だとフタ子に返事をしてすぐに教室に戻ることにした。


 会ってない奴がまだ六人もいる。出来るだけ関わりたくない。こんなこと、もう仁王で充分だ。関わりたくない…………。

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