黒歴史 | ナノ

 ミーティング中のフタ子、更に仁王やブン太も待ちつつ、玄関口でぼうっとしていた。そろそろ終わるかな、あのアホが来るころかなあ…。

「ふーん、アンタが……」

 突然、真横から聞こえた声。お待ちかねのバカでアホな彼の出番である。しかし、いつものように「見た目はフタ子センパイそっくりっスね」的な言葉はなく、続いたのは、

「アッーーー!!!」

 といった、後から玄関から出てきたブン太もびっくりの素っ頓狂な悲鳴である。

「赤也、うっせえぞ」
「丸井先輩、この女超やべえっスよ!?初対面の俺に向かって腹パン決め込む暴力女!!!」

 否定はしない。

「ああ、俺もほぼ初対面で顔面になあ…」
「顔面…………!!」

 蒼白。朝の真田以上にやかましいが反面、私に怯える姿は面白いことこの上ない。
 しかし五月蝿い赤也に対しての本日の目的はそんなことではない。ブン太と、密かに後ろにいた仁王に指示し、打ち合わせ通りに赤也を羽交い締めしてもらった。

「何なんスかぁ!また殴っ…」
「フタ子のこと好きだよね?」

 ポカン。馬鹿が余計馬鹿に見える間抜け面である。

「何こいつ俺のこと好きなの?」

 そして、馬鹿が馬鹿なりに考えた結果がこれだ。好きな人に向かってあれだけ調子良く殴れるわけがないだろう。仁王の口角が上がるのが見えた。

「早答えときんしゃい」
「す…………好きっスよ」
「告白は?」
「たまにさりげなくしてるつもりっスよう。けど、……全然」
「まあ、そうだろうね」

 予想通り遠慮しない系。
 さてさて、本題に入ろう。彼がフタ子のことを好いているのは(最初からわかってはいたが)確固たる事実であり、彼女にさりげなく素直に好意も伝えている。

「私が求めることはひとつ。フタ子にアタックしまくること」

 フタ子の逃げ場をなくしていく。そして、彼女に足りない後先何も考えない馬鹿単純さを、この赤也くんにフタ子は感化されればいい。

「小賢しい知恵働かせたって無駄。だから、思いっきり頼むよ」


 少しくらい大人の余裕で優しく微笑んでやろうじゃないか。すると赤也の緊張はようやく弛み、…むしろ目を煌めかせいる。なんだなんだ?

「アンタ…俺を応援して……」

 ああ、なるほど。んなわけないでしょう。

「いいから。とっとと1回目の大告白をしてきなさい!」

 そうして赤也は再び玄関口より校舎の中へと飛んで入っていきましたとさ。健闘を祈る!

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