「紹介するね!こちらは、私がマネージャーをしている男子テニス部のレギュラー。で、こっちが私の双子の姉の名前でーす」
お昼の自己紹介の時間ともなると、フタ子はいくらか元気を取り戻しており、いつもと何ら変わらぬ展開であった。
……というのはもちろん前半だけに限ったことである。各々適当に名乗った後の、フタ子とのイチャイチャタイムが始まろうというときに、唐突に口火を切ったのはブン太。
「そういや仁王、昨日の落とし前まだ付けてねえよな」
えらくご立腹な様子。まさか昨日のアレで思い出していないことはないよな、とは考えていたが、ご立腹パターンは想定外だ。当然、一同ポカーンだ。
「ん?やるんかブンちゃん」
「いくら俺が甘いもの好きだからって、やっていいことと悪いことがあんだろ?表出ろい」
ブン太は自分より背の高い仁王の胸ぐらを掴んで扉まで引っ張っていく。しかし、おまんも来いと、私も腕を掴まれ結局ついていくことに。修羅場だ修羅場だー。
その時の、フタ子の泣きそうな顔ったら、もう。可哀想で可哀想で、私の良心は痛むのです。
◆「で?今の状況をちゃんと説明してもらいたいんだけど」
丸井ブン太くんはとりわけ怒ってもいませんでした。むしろあれだけ顔面ぐしゃぐしゃにされて少しも怒っていないのも、今考えてみるとおかしな話だが。仁王も始めからわかっていたのか、特に驚きもしていない。仁王のパイ投げ作戦はしっかり成功したわけだ!
「今の状況ってのは……」
「昨日が繰り返してることだよい。ジャッカルも他も意味がわからんとか言うし、あまりにも現実味がないからそれでも半信半疑だったけど、…お前らの顔見たら合点がいったわ」
さいですか。しかしブン太は何故こうも冷静なのだろう。黒歴史におけるブン太のイメージは、昼食の行動を見てもわかるように、どちらかといえばかわいこぶりっこ。ここで兄貴肌出してくるとは、予想以上に力になりそう。
「丸井の言う通り、同じ日が何度もループしてる。それで私達は、そのループから脱する方法を探してるの」
「だーから、昨日あんな事したってわけだな」
美味かったから良いけど。あ、そこは許してくれるのか。
「にしても、いっつもデータ取ってるはずの柳よりも先に気付くのはなかなか気分良いもんだなあ」
き、昨日柳には下着を見せたし、今日は思い出しているはずだとは、けらけら笑って機嫌の良さそうなブン太には言わないでおいた。
「そんで?明日に進める方法はわかってんの?」
「それは未だわからない。けど、」
そして、実行しようとしている作戦を、同時に仁王にも知らせるために話した。幸村の告白の件も何も知らないブン太に教えてしまうことにはなるが仕方ない。
「へえ、幸村くんが……ねえ」
だけどそれを聞いたブン太はブン太で、思うところがあるような、何かよくわからない感情を含んだ物言いをした。
とにかく、ものすごく心強いことには変わりない。