黒歴史 | ナノ

 さて、そろそろ仁王が来る頃合いであるが、彼とはこれからの作戦についてしっかり話し合わねばなるまい。フタ子の自覚はどう起こせばよいのか……ううむ。


「ッヒェエエエエイ!!」

 突然後ろからガバッと抱き付かれたことにより、ただでさえ考え込んで注意力散漫だった私はあられもない奇声を発してしまった。耳元で、女とは思えん酷い反応じゃの、とけらけら笑う声はもちろん仁王のもの。

「いきなり背後から抱き付かれれば、びっくりするから!」
「大成功〜」

 これまでは、腕を引いて抱く、といったパターンであったから、腕を引かれれば仁王が来たことはすぐに察することが出来たし、対処する術もあった。それを見越して、ガバッと……油断した。

「というより、早く離してよ」
「嫌じゃ、せっかく作戦勝ちしたんに。明日は絶対出来んくなるもーん」
「耳元で囁くな顔近い暑苦しい気持ち悪い離れろー」

 奴に腕ごと拘束されているせいで身動き出来ない。抵抗するためにもがいたところで、奴の腕の力が強まるだけだ。


「ちょっと雅治!名前に何してんのよー!?」

 そこでようやくフタ子の登場。仁王の身体と一緒に私も振り返るが、私を捕えていた腕が緩むことはなかった。

「おーフタ子」
「今雅治が抱き付いてるのは、私の双子の姉の名前!早く離してあげてよ!」
「そんくらい知っとる」

 え、と驚く彼女に、腕の締め付けはどんどんきつく、どんどんどんどん苦しくなる。さらに顔も近付いてくる。

「フタ子と違って、名前は優しいからのう。許してくれたんじゃ」

 許してねえよアホ。とはいえ仁王の魂胆は見えた。題して、イチャイチャしてフタ子に嫉妬なり寂しさなりを植え付けよう作戦〜。そのために私の身体は犠牲になったのである。
 …馬鹿らしく思えるこの作戦も、実際結構な効果があるようで、フタ子は何とも言えないような表情を見せた。

「フタ子、嫉妬か?」
「……ち、違うよ」


 その否定の言葉も、彼女がすぐに私達を見ないように走り去ってしまっては、嘘とバレバレなのに。

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