黒歴史 | ナノ

「それでね、結局、マネージャーになっちゃったんだ!でも、今はみんなを精一杯支えてあげたいって思うの」
「ふーん」

 きらきらの笑顔で、くるくる表情を変えて、実に楽しそうに話すフタ子。いつもは軽く相槌を打って流すだけの登校だが、今日は違う。

「ねえ、それだけ言うなら、好きな子とかいないの?」
「えっ…ええ!?」

 確信に迫る。彼女にまだ自覚がないのなら、幸村を受け入れるか振るかする決心くらいはしてもらわなければいけない。

「好きな人なんていないよ!み、みんなをそんな風に見たことなんてない……よ」
「フタ子は優しいから、誰かしらに好意を持たれてはいるでしょう?」
「そ、れは……」
「もしそうなら、はっきりしてあげないと相手も辛いんじゃないかな」

 ごめんね、フタ子。正直こんな状況でなければ、幸村の告白を保留することだって全然構わないし、今が楽しくてみんなが大切なら、いずれ来る終わりまで逆ハーレムをそのまま続けてても良いと思う。だけど。辛そうな表情に気付かないふりをする。


「ム、二人とも珍しくきちんとした身なりなのだな」

 奇声を発さない真田に気付いた途端、フタ子は表情を無理に明るいものに変えた。仲間を心配させたくない、ということかな。健気だねえ。

「と、当然だよ!ね、名前」
「そうだねえ」
「それが続けば関心なのだが…」

 すると突然、フタ子は黙り込んでしまう。何事だろう。

「……うん。弦一郎のこと、いつも怒らせてばっかりだもんね。ごめん、これからはちゃんとする」
「そうか」

 謎の反省。そういう謎で天然な可愛さが男共を虜にしているというのに、わからないものかね。
 とはいえ、恐らく貴重なオッサンの微笑みと、やんごとなきフタ子の笑顔は、父と娘の感動のワンシーンを見ている気分で、実に微笑ましいです…。
 さらに、途中吹いた例の突風で、(説明は省略するけれども)父と子の間にはなんとも甘い雰囲気が流れてしまったが、決してスカートが捲れてしまう、なんてこともなかった。実に平和です……。


「いい雰囲気だったけど、好きな人は彼なの?」
「ち、違うよ!」 

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