黒歴史 | ナノ

「何で雅治もいるの?」
「名前と一緒に帰りたいんじゃもーん」
「私だって名前と二人きりで帰りたいのに!」

 帰路。悔しい想いを心の奥底に仕舞い込む帰路。今日は進展というには遠いけれど、いろいろ収穫もあったような気がする。殴ることによって確実に赤也は思い出していたし、事故とはいえ真田もループから脱出している。明日のためにブン太と…柳にも何らかの印象付けはしておいた。…とはいえ、この不可思議なループを終えるための決定的な何かがやはり足りない。

「フタ子」

 この状況で幸村は殴れない。だけど、このモヤモヤした雰囲気を何とか打破しなければ進めないのではないか、とも思う。

「私たち先に行ってるからねー」
「あっ名前っ!待っ…」
「今日一日ずっと避けてただろう。…逃げるなよ」

 やはり、フタ子をどうにかするのが一番なのだろうか。トリップしてきた私と、その私の黒歴史であるフタ子。いわば今はフタ子の危機。繰り返しのターニングポイント。そう、この時が…。

「俺を見ろ」

 "今"を何とかするべきなのか。フタ子を何とかすべきなのか。…いや。

「思うんじゃが」

 その時、隣で共に陰に隠れていた仁王が静かに口を開いた。

「繰り返しの分岐点である今この時、フタ子と幸村をどうにかすべきなんじゃなかろうか」
「あんたもそう思う?」

 フタ子が幸村を受け入れるか、拒否するか。だけど、フタ子自身、本当は誰が好きなのか、何と返事をしていいのかわかっていない。それを自覚させるべきなのか。…逆ハーレムの主人公にオチを作るべきなのだろうか。やはり、そこをもう少し踏み込んで考えなければならないのか。
 そうなると、隣の彼には余計辛い想いをさせるのでは?いくらフタ子が初めに言ったように変態だからといって、真面目にフタ子のことを好いているはずだから。彼女が誰を好きなのか。誰もがフタ子を好いて、誰もが受け入れられる曖昧な日常が終わるということ。

 当の本人は幸村のプレッシャーに耐えられなくなり、こちらに向かって走ってきた。目に涙をいっぱい溜めて。そして私に縋り付く。同じように。

「私、どうすればいいのか、わかんないよ…っ!私、私が好きなのは……」


 ぐにゃりと視界が歪む。
 仁王の表情は相変わらず読めない表情だ。けれども、何か強い決意を感じるのは気のせいか?いや、私も決心しなければ。次で終わりにする。この繰り返しを終わらせる。例え彼が、彼女が辛くても、終わらせなくてはいけない。

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