「ふーん、アンタが……」
突然、真横からの声。ニヤニヤ笑う見慣れたモジャ原モジャ也。
「見た目はフタ子センパイそっくりっスね!さすが双子〜」
にまにま。じろじろ。モジャモジャ。顔を近付けで頭のてっぺんから、足の先まで。舐め回すように見られる。不快。
さて、ここまで毎度同じ動きをしてきた切原赤也だが、ようやく違う反応を示した。
「あり?なんか、昨日も同じ事を言ったような気が……」
そして、そんなバカ赤也に、極めつけの仁王の登場。
「腹の調子はどうじゃ?赤也」
そう呟いた途端、彼の顔色は一瞬にして変わる。腹。仁王。目の前のフタ子によく似た女。昨日。……そして合点。彼は昨日殴られたところに思わず手を添え、私を見た。
「あっあっあっアンタ……!」
何かのきっかけがないと繰り返しに気付かないのか。それともただ単にこいつがバカで、繰り返されていることに気付かなかったのか。
とりあえず、切原赤也をこちら側へと引き込むことに成功したらしい。
「昨日はいきなり殴られたけど、いくらフタ子先輩とそっくりだからって今日は容赦しねえかんな!!」
「昨日?……まだ気付いてないの?」
この子はカレンダーをチェックしていないのだろうか。朝練のメニュー、友人との会話、部活のミーティング。その全てが昨日からそっくりそのまま変わっていないことに気付いていないらしい。想像以上に馬鹿?
「赤也は阿呆じゃ、仕方なか」
「アホって何スか!アホって言った方がアホなんスよ!!仁王先輩のアホ!!」
「…………馬鹿」
結局のところ、即戦力にはならないようだ。もういいや、この馬鹿は放っておこう。
「うっせえ暴力女!!」