「紹介するね!こちらは、私がマネージャーをしている男子テニス部のレギュラー。こっちが私の双子の姉の名前でーす」
あなた方はいつになったら私の名前を覚えていてくれるんでしょうね!…いつもと変わらず自己紹介でございます。
「どうしたの、弦一郎。熱でもあるの?」
「い、いや……うム」
ただ、真田だけは未だに顔を赤くしていた。私のことは直接見れないようだけど、ちらちら視線を寄越すのはむしろ辛いから止めて欲しい。
「もしや真田は」
「……昨日下着を見られたの。それを覚えてるっぽい」
「ほう、さすが真田じゃの」
仁王はケラケラ笑う。腹が立つ。下着を見られたこっちの身にもなってみろ。しかし、真田が覚えていそうだとはいえ、あの様子で私たちの力にはなり得ない。面倒くさい!結局何にも、解決に近付いてさえいないんじゃないか。
「フタ子のからあげうまそー」
「欲しいの?」
「うん。あーん」
あーんじゃないよ、あーんじゃ。くそやろう。こっちは早いところ思い出して貰いたいというのに。イチャイチャなんてしている暇があるとでも思ってるの?バッキャロー。
「ブンちゃん。からあげよりもっとええの、あるぜよ」
隣にいた仁王が突然立ち上がる。そして右手で私の右腕を掴み、引き上げる。当然、私は体勢を崩すのだが、それは優しく仁王に支えられて、転ぶなんてことはなかった。が。…は?
「名前がブンちゃんのためにケーキ用意したんじゃと」
は?いつの間にか左手にはクリームたっぷりのホールケーキ(いちごなどの装飾はなく、しかも薄く、ほとんどクリームだけの適当感たっぷりのもの)(そう、表現するなれば罰ゲームのパイ投げ等に使用されるような安易な造りのソレであり…パイ投げ?)
それを、その私の左手の上のケーキを、仁王の添えた左手に促されるまま、丸井ブン太くんの顔面へ、顔面へ…………。
ぐしゃあ
あ、あれー?何をさせてくれるんですか仁王さん……?