下着を見てしまったことを覚えている、だと?いくらなんでもそれは…はあ。ということは、殴るか、下着を見せるかすれば奴らの記憶は残っていると?…いやいや、後者は絶対にしないけど。はあ。そりゃないよ。暴力か色仕掛けだなんて、中学生にはとてもじゃないけど使えない芸当である。
悶々としながら廊下を歩いていたそんな時。
突然後ろから腕を掴まれる。
いや、もうわかっているから。何故わざわざ腕を掴むかな。もしかしてまた忘れてしまったとか?それだけは勘弁してほしい。お願いだから覚えていて。
しかし、いつものようにそのままグインと引かれることはなく、むしろ名前を呼ばれた。
「名前さん」
柳生、だった。ちょっと焦ったり、困惑しているように見える。もしかして思い出したとか?彼は仁王みたくバカじゃないから、言われなくても時間が巻き戻っていることに気付いて、何か知っていそうな私を頼って来たということか。
……なんてね。答えなんて、もうわかっている。
「あんた仁王でしょ」
「な、何を仰いますか。私は柳生比呂士で…」
「柳生は私のこと苗字で呼ぶけど?」
「……何じゃ。せっかく驚かしてやろう思ったんに」
そんな簡単なミスしてどうする。そもそもイリュージョンの無駄遣いだ。何がしたいんだか。…悪戯心に溢れているということかな。実に中学生らしいね。
「女子に見破られるんはこれで二人目ぜよ」
「どうせ、一人目はフタ子なんでしょ」
その後、フタ子が現れたりしたが、仁王の焦りっぷりったらなかった。とりあえず、覚えていてくれただけで良しとしよう。