黒歴史 | ナノ

「名前ー朝だよー!早く起きないと初日で遅刻しちゃうよ!」
「ファッ!?」

 学生時代とは違い、お勤めしだすと"遅刻"の二文字は恐怖そのもの。飛び起きようとした。が、のし掛かる重みで身体の自由が効かない。…………は?
 朝目が覚めたら、私の上に女の子が乗っかってる。どこかで見た顔。瞳をぱちくりさせた、可愛い女の子。…………は?

 私、一人暮らしじゃありませんでした……?

「おはよー名前!朝ごはんもう出来てるよっ」
「う、ん…………??」
「寝ぼけてるの?まさかまだ時差ボケしてるー?」
「???」

 とりあえず、促されるまま洗面所に向かって、そして気付く。……オイ、鏡の中の私は誰だよ。間違いなく私なんだけど、誰だ。今日も元気にお勤めする私ではない。だけど、見覚えがある。私をいくらか若くした…そう、十数年前の私にそっくりじゃないか?十数年前の私に。…さっきの女の子も私だ。中学の頃の私にそっくりな……え?

 理解出来ない。

「ママとパパはもう出掛けちゃったよ。名前の転入初日を見送れなくて残念がってた」
「そ、そう……」
「だからね、私が付いてるから大丈夫って言ったら、今まで一緒にいれなかった分、フタ子は名前にべったりなのねって」

 フタ子?この子はフタ子って名前なのか。…なんだか昔を思い出す名前。抹殺したいあの頃の、ね。今でもオタク貫いてるけどさ、やっぱり中学生始めの頃はちょっと黒歴史というかごにょごにょごにょ。


「食べたら早く制服に着替えて!本当に遅刻しちゃうよー」
「…うん、わかった」

 中学生くらいに身体が若返ってるってことは、周りの状況もイロイロ変化してるってこと。そもそもそれ自体まったく意味がわからないんだけど、今は流されるしかないようだ。
 歳を取ると、本当、相当びっくりすることでも、いちいちびっくりする元気もないってことですね。

 その制服を目にするまでは。


「立海の制服を名前と並んで着れるなんて嬉しいなーっ」
「……………………立海?」


 叫ばなかっただけマシだと思ってちょうだい。

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