黒歴史 | ナノ

「そういや、あんたは何で覚えてるの?」
「愛の拳?」

 冗談はさて置き、確かに一理あるとは思う。仁王とその他で違うことと言えば、腹をグーで殴ったことくらいだ。これから会う人物みんな殴れということかな。…それはさすがにないか。というか、柳とか幸村を殴れる気がしない。恐ろしい。

「あ、そうだ。今から行くところがあったんだ。あんたもついて来る?」

 そして至るは例の階段。
 もうひとり殴れない人がいる。…勘違いしてもらっては困るけれども、私は一般的な大人の女性であり、そもそも人間に暴力を振うなどとても出来やしない。とはいえ、今の状況では自分のためと思えば割り切れるかもしれないが…さすがに正義のヒーローさまには良心が痛むというもの。

「繰り返されていることの証明というか、私の癒しというか…」
「名前―!ちょっと待ってよー!!」

 追ってきたフタ子。もちろん、あと5段のところで彼女はつまずいて。そしてお約束の王子様の登場で。…結局、私は無力で、ただ避けるだけ。

「お?」

 と思いきや、私が身体を動かす前に、勝手に動いた。私がぎりぎりまで避けないでいたせいか、仁王がフタ子たちの落下地点から引っ張り出してくれたようだ。
 事前にちゃんと説明していなかったから、危ないと考えてくれたのだろう。だけど、どうせなら、ジャッカルの方を受け止めてあげて欲しかったな、なんて。絶対痛いもの。

「事前に知っとるというんも便利じゃのう」
「そうは言っても、今のようにどうにも出来なかったりもするけど」
「充分ぜよ」


 今更気づいたけど、仁王もフタ子のこと大好きなんだっけ。黒歴史だし。逆ハーレムだし。証明、とはいえ、好きな女の子と友人が抱き合うところなんて、中学生にしてみれば見たくない光景だろう。軽はずみだったかな、とお姉さんは少し反省するのであった。


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