黒歴史 | ナノ

 私、苗字名前。以下略。

 三度目ともなると、いくら転入初日の設定であっても、真新しいのは制服だけで、気分は全くそんなんじゃない。
 少しだけ上げたスカートに、よくやるね、とフタ子は笑ったけど、実際はフタ子よりまだ長いのだから見逃してほしい。いい歳だし、流石にミニすぎるスカートは元よりあまり好きじゃない。


「そこ!スカートが短い」

 キーンと耳鳴りするほどうるさい怒鳴り声が聞こえた。風紀委員の登場ですね。

「わ、見つかっちゃったよ」
「苗字か…お前はいつもいつも、そうふしだらな格好を。隣にいる苗字も苗字だ!スカートの丈も、第一ボタンも……って、苗字が二人ィィィ!?!?」

 状況が違っても、同じリアクションはないよ。何度もやかましいっての。…ちょっと面白いけど。なんというか、ジジくさい。

 例え怒られたとしても、それから逃れる術を既に知っているというのは、こういう時楽だ。いや、毎朝毎朝怒鳴られるのも嫌なんだけど。
 先にフタ子の腕を取ってスタンディングスタート用意。抜かりはない。

 そして、ブワ、と突風。髪が荒れ、真田の動きも少し止まる。そして私はフタ子と以心伝心で駆け出そう、と、したその時だ。


「!!!!」


 ヒラリ。

 少しだけ短くした私のスカートが、浮かんで、舞い踊る。


 …………真田の目の前で。


「…………」
「!!!!!!!」

 真田の間抜け顔半端ない。真っ赤さも半端ない。奴は絶対見た、完全に見られた。やっちまった。短くした途端こんなことが起こるなんて予想外だ。流石に…は、恥ずかしすぎる。

 とりあえず、フタ子の腕を引き予定通りに駆け出した。後ろから真田の怒声は聞こえて来なかった。……それが逆に辛い。

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