赤也を見送った後で、ひとつ溜め息を吐く。やっぱり、よくわからない状況で気を配りながら誰かと接するのは疲れる。嫌なタイプなら、なおさら。
「苗字名前、苦手なタイプは赤也、と……」
「うわ」
ちょっと違う登場の仕方だけど、柳には違いない。
「柳蓮二だ。早速だが、昼休みに取りきれなかった君の情報を詳しく…」
うわあ。昼休みのあの集まりをすぐに脱け出した裏目がここで出るなんて思いもしなかった。何だかんだフタ子ばかりを見ていると思った昨日の柳も、新入生の私のデータ取得のために注意を払っていたというわけか。
「ああ、すまない。俺は各人のデータを取ったり、それを分析したりすることが好」
「知ってるよ」
彼の言葉を遮る。
「柳蓮二、F組。カウンターパンチャー。データテニスを得意とし、部では会計、また生徒会では書記。誕生日は6月4日。血液型はA型。好きな言葉……までは、よくわかんないけど。でしょ?三強の参謀くん」
彼は開眼する。
「人見知りではないのか」
「まーね」
言っちゃった。逆ハー黒歴史夢小説を書いちゃうくらいだから、立海レギュラーのことはみんな大好きだった。今でも大まかに覚えているくらい。
…言うつもりはなかったのだけど、まあ、柳ならいいかな、なんて。
私の気を知ってか知らずか、柳は少し嬉しそうに笑った。
「もう少し中学生らしくしたらどうだ」
「その言葉、あんたにもそっくりそのまま返すよ」