黒歴史 | ナノ

「今日の部活はミーティングだけだから、ちょっとだけ待ってて欲しいの。終わったら一緒に帰ろうね!」

 可愛らしい笑顔で誘われたから待っているわけではない。手掛かりが掴める可能性を感じただけだ。…あと、昨日は結局家に帰っていないので、帰り道がわからないのだ。恐らくもう一度通えば覚えられる、はず。


「ふーん、アンタが……」

 真横から声が聞こえた。ニヤニヤ笑うモジャモジャ。

「見た目はフタ子センパイそっくりっスね!さすが双子〜」

 来る、とはわかっていても。手掛かりのためとは言えど。ジャッカルとは違って、この赤也は流石に関わりたくない。再びジロジロと見られる。どうしたものか。

「…もしかして、フタ子先輩とは違って人見知りっスか?」

 そういうことにしておこう。変わらず黙秘権を行使した。

「フタ子先輩は愛嬌あって可愛いのに、顔だけそっくりなんスね。もったいねー」

 大きなお世話だよ。というか全国の人見知りさんに謝れ。私にも謝れ。
 やっぱりこいつは腹立たしいことこの上ない。仁王みたいに一発殴ってやらないと気がすまない。いつか絶対やってやる。(だって中学生だもん)と心に決めて、私にまったく興味も失せて立ち去るその後ろ姿を見送ってやった。

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