黒歴史 | ナノ

 予測可能。そんなわけで、面倒な事態は回避可能であるのだが、それを全て避けても先には繋がらない、ような気がする。だけども、鬱陶しい奴らとは関わりたくない、逃げたい!
 そんなジレンマに悩まされる私ではあるが、一人だけ許せる男がいたことを思い出した。彼になら、巻き込まれても良い気がする。と、いうわけで。

 私は例の階段下で、来るべきヒーローを待っていた。


「名前ー!ちょっと待ってよー!!」

 来た。私をこのわけのわからない状況に追い込んでる張本人。可愛いドジっ子天使ちゃん。

 そして、あと五段というところで、フタ子は階段から足を踏み外した。予想通り。…とはいえ、その後の行動をどうするか実はまだ決めかねていた。とりあえず、私は落ちてくるフタ子に向かって両手を広げ、腰を落として体勢を整える。

「危ねえ!!」

 待ってましたヒーローさん!

 彼の行動は昨日と同じで、フタ子の腕を引き素早く抱き止めるのである。が、予測済みだった私は、落下点にいる私まで庇うという彼の優しさから逃れ、床から受ける衝撃を軽減することを試みた。
 私の目の前で、二人は抱き合い倒れ込む。

「……っ痛ぇ」

 あー本当に男前だわ。変態野郎の仁王とは、同じ"抱き締める"でも、その重みと男らしさが全然違うね。

「ジャッカルもフタ子も、大丈夫?」

 フタ子と、ジャッカル両者に手を差し出して身体を起こしてやる。今回の私に出来ることなんてそんなことくらいだ。

「ご、ごめんね!私がドジっちゃったばっかりに!怪我とかしてない?大丈夫?」
「い、いや!お、俺も、いくら事故とはいえ、密着しちまって、えっと……ごめん」
「いやーお熱いねー」


 顔が真っ赤で、初々しいお二人。いっそのこと、この二人がくっついたら面白いのに、なんて考えつつも、やはり思い出せない黒歴史の結末に想いを馳せるのだった。

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