黒歴史 | ナノ

 転入初日に時間が巻き戻っている。自己紹介も始めからだったし、すべてが昨日のまま、巻き戻っている。昨日、という表現が適切なのかは不明だが。

 いろいろ案じながら廊下を歩いていた時。

 突然後ろから腕を掴まれる。

 ……これは、昨日の出来事から言えば仁王に違いない。しかし、今日は次の行動がわかっている。勝てる!!
 そのままグインと引かれる前に自分の身体を反転させ、同時に肘を引いて力を溜めた右拳を、相手の腹へと真っ直ぐ、ストレートを決め込んだ。

「っ…」

 ざまーみやがれ、コート上のペテン師くんよ。…まあね、中学生相手に大の大人が腹パンなんて何やってんだかって話だけど。今は私も中学生だし!初対面の痴漢に情けは無用!

 とはいえ、日々テニスで鍛え上げた腹筋と瞬発力のせいで、大して仁王にダメージを与えられたように思えないけどね。

「ごめんなさいね。私、フタ子じゃないのよ」

 そして、クールに言い放ってやる。良い気味。仁王の驚いた顔、目を見開いた表情。物理より精神攻撃の方がたまらない。昨日の溜まりに溜まった鬱憤のお返しだ。仁王だけのせいじゃないけど。


「ちょっと雅治!名前に何してんのよー!?」

 後ろから高い声を上げてやって来たフタ子。更にギョッとする仁王。

「…おまんフタ子じゃなかったんか」
「双子の姉の名前だよ!大丈夫だった?雅治変態だから。変なことされてない?」
「大丈夫、退治した」

 仁王は何かを言いたげにこちらをじっと見ていたが、変に関わってはまた面倒事になるはずだ。私はフタ子に手を振り、早々と教室へと戻るのであった。

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