今日は散々だった。若返って、双子の妹ができて。と思えば自分の黒歴史真っ只中。地獄。昔好きだったキャラクターたちはみんなフタ子にデレデレのメロメロで気持ち悪いし、対してただの双子の私には冷たい当たり。関わりたくない私としてはそれでも別にかまわないのに、どうしてか奴らは接近してきて、嫌な思いだけさせていく。
腹立つ。ジャッカルは、あのヒーローに免じて許せるけど。はあ、これからどうしようか。これから毎日通ることになるであろう帰り道をフタ子と歩きながら、考える。
「フタ子」
フタ子を呼び止める声。なんとも威圧的な、しかし静かな声。こいつは、私に直接関わって来ず、お昼休みの時は一度だけ目が合ったくらいだ。あとは微笑んでフタ子を見ていただけ。その幸村が、いよいよ来たってわけか。いやしかし、呼んだのはフタ子。
一方のフタ子は、蒼白な顔で固まってしまっている。なんだろう?
「今日一日ずっと避けてただろう。…逃げるなよ」
ビクリ、とフタ子の肩が揺れる。相当怯えてるけど、一体、二人に何があったのか。
「俺を、見ろ」
くさい台詞。幸村の表情は真剣そのもの。珍しくシリアスなモードです。とうとう耐えきれなくなったフタ子は私の腕を引いて駆け出した。朝の真田からの逃亡を思い出すが、今回はそんな軽いものではないらしい。
推理するに。この世界では既に、幸村はフタ子に想いを告げたのではないだろうか。みんなが平等に愛し、平等に愛される逆ハーレムの世界を、幸村は一人脱け出した。典型的な逆ハー主人公フタ子は、その展開に戸惑っている、と。…そんな話を書いた気もする。昔の話だからあんまり覚えてないけど。一番に抜け駆けするなら幸村だ、と考えていたような気もする。
幸村が追ってくることはなかった。いい加減走り疲れた私はフタ子の手を引き、止めた。振り返った彼女の目にはいっぱいの涙。そして私にすがり付く。
「私、どうすればいいのか、わかんないよ…っ」
あれ、そういえば、確かにこういう逆ハーレムな夢小説を書いたけどさ。
誰オチだったっけ?
「私、私が好きなのは……」
ぐらり。目眩がした。