あの子は自由人 | ナノ

もしもルドルフ

もし自由人がルドルフのマネージャーだったら


 この人がマネージャーとして入部して、部活が変わった。部活っていうか、…観月さんが。
 観月さんが見込んだだけあって、テニスのルールとか全く知らない割に、何でも機敏に言われた仕事をこなしていた。観月さんの部下というか秘書みたいに。始めは観月さんもそれで充分満足そうだったんだけど…。

「じゃあ、帰ります」
「待ちなさい。自分の言われたこと全部終わらせたからといって、すぐに帰るんじゃありませんよ」
「家遠いんで。終電に間に合わなくなる」
「まだ5時です!それにあなた、寮じゃありませんか!」

 だって観月が僕の言うことだけ実行してくれれば良いとか何とか言ってたんだもの。…観月さんがすごくイライラしているのがわかる。
 だけど、そんな二人の姿に和まされてる俺達も俺達…。今日も平和だーね、と誰かが呟くのが聞こえた。




 さらにこの人は無表情で何考えてるのかわからないくせに、悪戯とか意地悪とかそういう類いのものが大好きらしい。

「兄貴、観月が呼んでる」
「わかりました。…って、いい加減にその"兄貴"呼び、止めて下さいよ!」

 "弟"だと何万回と呼ばれ、それが嫌で転校してきた。ここに来てそれが全くなくなったってわけではないんだけども。…それなのに、この人はその"不二弟"ではなく、何故か俺を"兄貴"と呼ぶ。もちろん嫌がらせで。
 彼女は俺の抗議もものともしない無表情で「どうどう、早行け」と宥めにもなっていない宥めをし、観月さんを指差した。仕方ない、観月さんを待たせるわけにもいかないし。

 …そこにいた観月さんは、もう、近付くだけでわかるくらいにすごくイライラしていた。

「裕太くん、ちょっと打ち合ってもらえませんか」
「はあ………」

 マネージャーのあの人は、マネージャーの観月さんの選手魂に火を付けるようだ。




 観月さんはたまに高級そうな(実際高級な)お菓子をお取り寄せして、部活後に配ってくれたりする。美味しい紅茶も一緒に。甘いもの好きな俺としてはすごく有難いし、嬉しい。
 そしてこの人も、俺と同じく甘いものが結構好きらしい。とはいえそこら辺の女の子とは違って、大好きな甘いものを食べたからと言って可愛く笑うとかそういうのは全くないけど。

「もっと美味しそうに食べれないんですかね」

 観月さんが嫌みを言う程である。しかし、彼女はそれを特に気にすることもなく、お菓子と紅茶を味わう。

「私、観月の趣味素敵だと思うよ。こないだ見せてくれたお皿も、すごく可愛かったし」

 嫌みを言ったはずが気にもされず、逆に褒められてしまった観月さんは、思い通りにならない彼女に多少イラつきながらも、結局満足そうに笑うのだ。

「んふふ、そうでしょう」

 今日も平和だ。



25.05.2013 - 01.07.2013

 

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