あの子は自由人 | ナノ

見学に誘う

 次の休み時間、柳がクラスに来た。もちろん目当ては苗字である。さすが、参謀は次の一手が早いのう、と仁王が笑っていた。

「苗字さん、今日の放課後に予定はあるだろうか」
「ないよ」

 あーあ、それ嘘でも「暇じゃない」って答えた方がいいのに。バカ正直。

「では、部の見学に来てはくれないだろうか」
「んーでも今日暑いからなあ」

 そ、そこはバカ正直にならなくていいんじゃないか。さすがにまだ九月も入ったところで、涼しくなるのなんてあと一月も先だ。暑いから行かないとか、舐めてる…いや、部活する気がない奴なんてだいたい面倒とかそんな理由だし悪いわけじゃない…とは思うんだけど。柳も同じようなことを考えているらしく、次の言葉が出てこない。

「冗談だよ。テニスのルールとか教えてもらえるんだろうし、行くよ」

 ワンテンポ遅れて、「ああ、そのつもりだ」と返す柳は完全に相手のペースに飲まれている。彼女のあの言葉からして、すべて想定内の事項だったらしい。まあ、昼休みの女子らとのやりとりの後、すぐに見学の誘いだもんなあ。

 それにしても、苗字、強者すぎだろい。苗字の他に強者マネージャーがまったく考えられなくなってきた。たぶん、レギュラー陣みんな、同じことを考えているのだろう。

 

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