あの子は自由人 | ナノ

イス占領居眠り

 トイレから戻って来たら、さっきまで俺の場所だったところが占領されていた。

「何、寝てんの?」
「みたいだな」

 さっきまで丁寧に赤也に英語を教えていたというのに。赤也は赤也ですごい険しい表情でプリントに向かっているし、しかし苗字はさっきまで俺がいた場所で突っ伏している。そこ、日当たりがよくて気持ち良かったのになあ…あ、だからか。

「この人自身は勉強しなくて大丈夫なんスかね」
「一応、ノートは持参しているようだが」

 投げ出された2冊のノートを柳は見つめた。表紙には理科、あと歴史とそれぞれ書いてある。赤也は興味津々でそれを覗き、そしてすんごい顔になった。

「あー、綺麗じゃろ」

 こいつのノートは綺麗だ。だって、それ授業ノートは別に、放課後せっせとまとめた改訂版だもんな。ちなみに普段のノートは書き込みが多くて煩雑な感じだが、授業中にそれだけ集中して先生の話を聞いてるってことなのだ。去年同じクラスだったし俺たちは知っている。
 何かを思い付いたのか、赤也はニヤニヤし始めた。

「落書きでもして彼女を驚かせてやろうなんて思っていないだろうな」
「何でわかったんスか?!」

 わっかりやっす。だが、赤也のヘタクソな落書きなんてノートに書かれた日には…。

「やめときんしゃい」

 ビクリ。赤也の肩が大きく揺れる。仁王の制止の声は思った以上に低かった。

「こーいうの、仁王先輩の得意分野でしょ?!」
「一度痛い目見てんだよい」

 仁王も、そんで巻き込まれる形で俺も。…詳しくは語りたくないんだけど。
 赤也はますます顔を青くして、右手に握ったペンを見た後、観念して頭を垂れた。そうだ、それでいい。

 もぞもぞと苗字は動きを見せたが、まだまだ気持ちの良い睡眠時間は続くのだろう。



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「あいうえお」第ニ段は丸井でした。過去のことは書くのが面倒だったとかじゃないよ!

 

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