あの子は自由人 | ナノ

軽い男がそこに

 試合会場で一人でうろうろしている女の子がいた。あれは、立海のジャージ。マネージャーかな?困っているようだし、声をかけてみる。いや、決してナンパなんかじゃないよ。人助け人助け…。

「何か探してるのかい?」

 しかし、彼女は返事をする前にその可愛い瞳で俺と、俺の全身を見回した。じっくり。何を考えているのかは読めない。

「…もしかして、」

 もしかして、以前に会ったことあるとか?以前にナンパしてたとか。…うーん?この子に関する記憶はないんだけどなあ。

「テニス部員に白い頭の不良とか、その不良について『デスデス』言ってるバンダナくんとかいたりしません?」

 …何その阿久津と壇くんをピンポイントで指してる言葉は。阿久津と壇くんのことかな、と問えば、ちょっとだけ明るい表情になる。うん、可愛い。
 やっぱり。その白い学ランには見覚えがあったんだよなと彼女は一人で盛り上がっていた。
 はっと思い出したように彼女は顔を上げ、俺を見た。

「あー、実は人を探してるんですよ」

 なるほど、人探し。

「黒いモッジャモジャのワカメみたいな立海の野郎見てません?」

 …黒いモッジャモジャのワカメみたいな立海の男子ねえ。誰のことを言ってるのか覚えがあるような、ないような。
 くるりと周りを見回す。思ったより早く、標的を見つけることが出来た。

「もしかして、あれかい?」
「あ、あれです」

 結構大人しそうな子なのに、それからの行動には驚かされた。これだから女の子は無限の可能性を秘めていて、可愛くて、素敵だ。


「モジャモジャワカメ!!」


 モジャモジャワカメと言われた当の本人は、耳聡くその単語を聞き分け、ものすごい形相でこちらまで走って来た。立海の二年生、切原赤也クンだ。

「誰がワカメだってえ!?」
「大声出すな」

 切原がキレかかっているにもかかわらず、彼女は何も気にすることなく、真田にチクるぞと低い声で言った。扱い方がよくわかっている。切原は一瞬にして顔を青ざめさせ、逃げるように去っていった。

「助かりました、ありがとうございます」
「いや、いいよーいつでも困ったら頼って欲しいな」

 ところで名前は、なんて言葉を発する前に、彼女は切原の向かった方にすでに歩を進めていた。表情もキリリとしたものに変わっていて、仕事の出来る女の子って感じ。切原に臆することのないカッコいい女の子。本格的にナンパする前に逃げられちゃったけど。立海のマネージャーね、記憶にしっかり留めておこう……。

 

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