あの子は自由人 | ナノ

少女と先輩

 なんと、この私、一度交通事故で命を失った後、幸運にも大好きな"テニプリ"の世界にもう一度生を受けたのですが、なんと、なんと…一年生まれてくる時期を間違えていたようです。
 大好きな立海に転入までしてきたのに……もう、全国大会が終わっているなんて………。

 むしろ、他校でテニス部のマネージャーをしていたのに、何故気付かなかったのか。今となっては自分がわからないです。


「どう?少しは慣れた?」

 とはいえ、私をマネージャーに推してくれた苗字先輩のご厚意を無駄には出来ず、ちゃんとマネージャーの仕事をしている。先輩も、引退されているのに、私を気遣って度々様子を見に来て下さる。

「引退したら全く練習に顔出すことなかったのに。そんなに新マネが可愛いんスか」
「切原より断然可愛い」

 引退したとはいえ、立海はほとんど内部進学らしく、実は幸村や柳たちも未だに中学テニス部に結構な頻度で参加している。(1年のギャップはそこで埋めることにする)。逆に苗字先輩は引退後まったく来ることはなかったようで、私に仕事を教えるためにまた来て頂いてるようだ。

「女子はいいよな。無条件で苗字先輩に優しくしてもらえて」
「切原くんが前に先輩に酷いことしたって聞いたんだけど」
「うげ」

 何言っちゃってんスか!と先輩に食って掛かる赤也。だけど簡単にあしらわれてる。はっきりきっちりとした力関係。すごい。そこには私の知らない一年があるんだろうな、なんて寂しくなるけど、もう嘆いていられない。生き返れただけで私は幸せなんだ。死んだ記憶があるってことは、生きる素晴らしさをよく知っているということ。

「おい、言っとくけど、この人、仕返しに俺のこと蹴っ倒したんだからな!?」
「元はと言えば切原くんが悪かったんじゃないの?」
「切原部長に味方はいません」

 この人は本当に大人で、そういうことも全部知ってるんじゃないかって。そう思うから憎めない。私の大好きな先輩です。

 

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