あの子は自由人 | ナノ

変な偵察の人

「あんた、偵察?」

 彼女はちょっとびっくりした顔をしていた。そりゃあ、そんな堂々と立っていれば見つかるのに。現に先輩の何人かはあの制服はどこだとか少し訝しんでいるところだし。気付かれないとでも思ってたのだろうか。
 彼女は余裕の表情で笑った。

「そーだよ」

 変な人。彼女は大きく伸びをした後、もう一度フェンスの向こうを見渡した。意識しながらも普段通りに練習する部員。ふーむ、と適当に声を発する。

「とはいえ、私テニスに関しては全然詳しくないから、見たところで何もわからないけど」

 テニス部のマネージャーになってまだ1年も経ってない、と彼女は言う。それなら何でこの人来てんの。制服を見たところで俺にはどこの学校だとかわかんないけど、よっぽど部員が多くて暇なのかな。

「あんたの学校、強いの?」
「全国制覇してるらしいよ」
「ふーん」

 ま、よくわからないし、深く考えないことにする。

「そんなに強い学校が、青学に偵察しに来るんだね」
「だって、青学、強いでしょ」

 まあね、と返事すると、笑っていた。なんというか、年上なのはわかってるけど、あんまりそれを感じさせないし、気の良い人みたい。


「おーい一年!早く練習に戻れってよ」

 桃ちゃん先輩に、その後ろはマムシの人か。すんごい睨まれてるなあ。テニスは知らないわりに、彼女は選手については知ってるらしい。しかもあだ名。いい加減練習に戻らないと。戻ったところで、彼女のことについてはしっかり聞かれるんだろうなあ。

「うわ、バス間に合わない」

 彼女は時計を見て呟く。慌てて荷物を持ち上げる。

「じゃーね、越前くん。うちと当たったときは頑張ってね」


 そのまま軽く走っていってしまった。

 常に静かに笑ってて、全然読めないところとか、俺のことを変に見透かしてる感じとか。どことなくうちの先輩に似ているなんて思った。またどっかの会場で会うのかな。全国制覇したことある学校って言うくらいだし。

 

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