あの子は自由人 | ナノ

選ばれた紳士

 仁王から遊ぼうなんて誘いがあるのは珍しい。午後から予定が空いている俺とジャッカルは適当に了承した。しかし、仁王はどこに行くのかお決まりの気まぐれで教えてくれない。
 昼飯を適当に済ませた後に向かったのは映画館だった。

「あれじゃ」

 陰に隠れながら仁王が指したのは、柳生と、苗字だ。柳生と苗字?なんか珍しい組み合わせだな。…というか、

「これって、所謂デートってやつ、じゃないか?」

 男女で映画か…意外と柳生も男なんだなあ、と関心。というか、仁王の目的はこれか。
 二人は今上映中の映画のポスター掲示の前で、恐らく今日観る映画を選んでいる。

『私、これがいい』
『苗字さん、そのようなものは…私……』
『駄目なの?』
『駄目、というわけでは。ただ少々…恥ずかしくて…』

「勝手にアテレコすんなよい」

 とはいえ、仁王のアテレコはぴったり二人にあっている。ラブストーリー臭ぷんぷんの洋画を苗字が指し、柳生が恥じらう図。クリスマスに苗字が選んだ映画もそうだったし、あいつはそういう系が意外と好きなのかもしれない。二人は自動化された券売機で券を購入していた。

「行くぜよ」
「え、俺らも観るのか?」
「当然だろい」

 いつ何が起きるかわかんないのに。そりゃあこんな映画をまた男ばっかりで観るのもあれだけど、行かないわけにはいかない。ジャッカルを引っ張って券を購入、そして、………上映。

 しかし辺りを見回しても二人の姿は見つからない。仁王が言うには、柳生は映画を観るときは後ろの座席を選ぶのだが、もしや苗字は前派なのかも。紳士が苗字に合わせるのも頷ける。

 …濃厚なラブシーンもある映画を、制服の男子三人で並んで観るのは正直キツかった。周りもカップルばっかりだし。それを柳生と苗字は二人きりで…まさか本当に付き合ってるんじゃないか?苗字は柳生に、ジャッカルに次いで好意的だったし、充分有り得る。


 げっそり気味で三人で映画館を出ると、うまい具合に標的の二人は見つかる。次は近くのファミレスに行くらしい。
 俺たちも何だかんだ疲れに疲れていたし、二人からは少し離れた席で休憩することにした。ここのパフェはアイスが3つあるのが良い。

「ジャッカル、残念だったな」
「は?何が」
「苗字は柳生を選んでしもうたぜよ…」
「ジャッカルが一番優しくされてたのになー」
「はあ…?」


 苗字はどうして柳生を選んだのだろう。やっぱり紳士的なところかなあ。大人びた考えのあいつには、上手に扱ってくれる紳士が良かったのか。二人が一緒にいるところなんてそんなに見たことないけど、面倒くさがりの苗字にとっては丁度良い距離感かもしれない。あ、パフェが来た。


「あら三人とも、奇遇ねー」


 と思ったら、苗字も来た。
 一口目にありつけるのは、いつになるのやら…。

 

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