あの子は自由人 | ナノ

私の知らない

 それまではクラスでも中心的な、明るい普通の女の子だったと思う。頭はいいし、スポーツも出来たし、友達もいっぱい。

「あれ?その学校って、女子校じゃなかったっけ」
「は?何言うてんねん名前。れっきとした共学や」

 その学校名はなんとなく覚えがあった。関西で有名な進学校である女子校。…それでないのなら、昔、友達が言ってた。


 ………………昔?


 これまで見ていた自分ではない誰かの夢、悪夢。違和感。全てに気付いてしまった。別にそれがショックだったとか、逆に嬉しいだとか、そういうわけじゃない。その作品だって、晩ごはんの時に適当につけてたアニメをなんとなく見てただとか、ファンの友達が騒いでたとか。青学についてはちゃんと覚えてるけど、氷帝が面白いとか、白髪の不良がいたとか…最後に主人公が勝って終わる、とかしか記憶にないくらい。だけど、気づいて、そして全部が面倒になった。

 "立海"に編入する時も気がつかなかった。テニス部に勧誘された時に気付くべきだったけど、「ジャッカル不憫で可哀想なところが愛しい」とか散々言ってた友人の持ってたトレカと目の前の人物が同一人物なんて。おかしいことこの上ない。
 この世界はうまいこと出来てるんだなあ。まあ、流れに身を任せておけばいいか、なんて。現在の私は、ぜんぜん"中学生"らしくない考え方をしていた。なんというか、冷めてしまったというか。


 それも、今日で終わった。
 主人公が全国大会で勝つ、私の知っているシナリオはここまでで、その後のことなんてまったく知らない。長かった、ここ数年私を捉えていた何かが、全部なくなったような気がした。いや、特に囚われてもいなかったんだけども。それでも、どこか晴れた気分なのだ。

 漫画の作品のキャラクターが普通に生活している世界、とはいえ、私は現にここに生きている。二度と途中で死んでやらない。やる気はなくたって、相変わらず全部面倒だって、この世界で人生をまっとうしてやるって気は、ある。



 私の知らない、この世界で。

 私の知らない、人たちと。

 

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