あの子は自由人 | ナノ

気分屋の気分

 部活の延長で苗字を度々遊びに誘うのだが、実は半分以上は断られている。理由は単純明快。今日は気分ではない、のだそうだ。そして、今回も断られた。レギュラー陣全員が珍しく揃ったというのに、面倒くさいのだと。


「あいつの気分がよくわかんねえよなあ」
「天敵の仁王くんのいる日は避けられているような…」
「普段贔屓にしてるジャッカル先輩のいない日とかも、関わってるんじゃないスか?」
「いや、彼女の気分と俺達の参加率の相関関係に何の法則もない」
「本当にただの気分かよ…」

 俺らも自分のその日の気分次第だから、とりわけそれがおかしいっていうのでもない。だけど、あいつの気分は結構気になる。

「赤也は苗字のこと苦手だよね。そういう気分屋なところが苦手なのかい?」
「確かに、仁王のことも不得手としているしな」
「プリ………」
「仁王先輩は酷いことしてくるから当然じゃないっスか!」
「では、何故なんですか?」
「むしろフツーに付き合える先輩らの方が不思議っスよ」
「そうだな。以前も言った通り、あいつは何を考えているかわからん」
「私はなんとなくわかってきたような気もするんですが」
「俺もだ」
「へええ、柳生も柳も」
「マネージャーは何か考えているようで、何も考えとらん」
「俺はよくわかってないが、こっちが考えすぎても無駄だってことはよくわかった」

 確かにジャッカルの言う通り、何を考えてるのかわからない!って考えてた最初の頃は、いちいち苗字って難しいとか驚いたりしてたけど、最近はまあ、そんなもんだで済ませるようになった。案外、普通の奴だ。
 そして、わからない、と考えることもあるけど、それが苦手だとかいう意識もとうになくなっている。気がする。たぶん、まだ苦手意識があるのは、赤也と真田くらいじゃないか?


「この中で苗字先輩と一番仲が良いのって、誰なんスかね」
「俺じゃき」
「その可能性はまったくありませんよ、仁王くん」
「やはり幸村じゃないか?」
「幸村の頼みを苗字が聞く頻度としても、そうかもしれん」
「いや、俺はそうは思ってないけどね」
「なら、誰と思ってるんだ?」

 幸村くんはこっちを見てニコリと笑った。釣られてみんなも俺を見る。

「穴馬は丸井かな」




「あ?みんな揃ってんだ」

 屋上の扉が開く。噂をすればなんとやら、苗字である。ケーキ5個しかないけど、まあいっか。と、近付いて手に提げた箱を幸村くんに渡す。

「幸村と桑原と柳生と丸井と、私の分ね」

 赤也は激怒した。この自由なマネージャーは、無視してケーキを選ぶのだった。

 

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