あの子は自由人 | ナノ

白い日の悪夢

「え?えええ??じゃあ、みんな、もらってるんスか…?」
「少なくとも、お前と仁王以外はそのようだな」

 練習が始まる前の部室で、そういえば幸村部長はマネージャーにバレンタインのお返しをもらたのかどうか、なんて話題を赤也が出したことで始まった。幸村には我々より先に既に渡したそうだ。…我々よりも先に?
 どうやら、苗字から何も貰ってないのは、赤也と仁王だけらしい。

「…ってことは、みんな苗字先輩に何か渡したってことなんスよね?」

 真田と柳がうなずく。

「幸村に、渡した方が良いと諭されたんでな」
「弦一郎に同じく」

 続いて柳生とジャッカル。

「私は、いつもお世話になっている御礼だと、バレンタインの日に渡してあったので」
「ジュースと、あんぱんおごってやった礼って」

 あんぱんは聞いてない。
 最後に、赤也は俺を見た。何その、同志だと思ってたのに、と言わんばかりの目は。とはいえ、俺はそんな大した理由もなかったんだけど。

「あーなんか…ノリで」

 自分で言って、ほんと何で彼女に渡したのか、よくよく考えてみるとあの時の自分がよくわからなかった。結局すぐに貰えたんだけど、お返しを貰う気がなかった?じゃあ、何故なんだろう。
 ここでようやく仁王が口を開いた。

「すっかり忘れとった…」

 誰にも何も返すつもりもないホワイトデー。どうせ苗字は何もくれないと思っていたホワイトデー。他の奴らがちゃっかり苗字から貰ってるホワイトデー。…彼は思ったよりショックを受けているらしい。

「渡さないと絶対くれないっスよあの人…」

 苗字を気に入る仁王はともかく、苦手意識を持つ赤也が欲しがる理由もよくわからない。

「別にいいじゃん。あげる気がないってことは、端からもらう気もなかったんだろい?」

 しかし、答えは至極簡単。

「俺だけもらってないなんて、悔しいじゃないっスか!!!」



 結局、仁王と赤也は部活が終わってから、近くのコンビニまでダッシュして、連名で大量に買ったお菓子を苗字に渡していた。その時の彼女は…すごく勝ち誇ったような顔だった。

 

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