「そういや最近、大丈夫か?」
今年に入ってからは、クラスでは何だかんだ言って俺と仁王と一緒にいることが多いし、思えば仁王と噂になったこともあった。靴箱は未だ交換したままで、そこに影響は出てないみたいけど、彼女なりに見えないところで対処はしてるんだろう。
彼女はちょっと唸った。
「…最近はまったくない」
だけど、タダでいじめがなくなるわけもないよな。どうやらその理由は彼女自身にあるようで、彼女はちょっと考え込んでから、ようやく口を開いた。
「実は、ちょっと前に仁王と噂になったときに、ファンの子たちに呼び出されて」
やっぱり裏でいろいろやられてんだ。
「『有り得ない』って何度も言ってるのに、あんまりにもしつこいからちょっと腹立って…」
だんだん小声になってきたので、顔を近付ける。
『うっせーな、僻んでんなやボケ』
やっぱり関西弁って威力あるね。呟いただけで、しばらく姿も見なくなったよ。…と、珍しく後悔しているようだった。暴言は(特に女子には)吐かない主義らしい。そういやあんまり聞かないかも。俺に向けたものじゃないけど、確かに恐かったし、絶対言わない方が良い。
「マ、ネー、ジャー」
えらくご機嫌な仁王が彼女の頭に手を乗せた。言っておくと、彼女は不用意に触られたり近付かれたりするのを嫌う。仁王はわかっててそれをやってる。
彼女は、片手でその腕を叩き落とし、無表情で、そして低い声で言った。
「触んなやカス」
…なるほど、こういうことね。そりゃあ恐いわ。びっくりしている仁王を余所に、おかしくなって俺たちは笑い合った。
20.04.2013-20.05.2013 拍手
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