あの子は自由人 | ナノ

帰路

「どうせならマネージャーも一緒に帰るぜよ」

 仕事を終えると一人ですぐに帰ってしまうマネージャーを仁王は引き留めた。それに彼女は特に変わった反応もせず、荷物を置いて素直に応じた。
 一緒に帰る、とは言え、彼女は話しかけられなければ、赤也がギャーギャー騒いでいるのをぼうっと見てるだけである。まあ、ここぞとばかりに柳が情報収集したりしてるけど。

 一人、また一人と電車を降りていく中で、最後に残ったのは、俺と彼女の二人。まさかの同じ駅、である。
 どうせなら、と自転車を駐輪場に取りに行くのを待ってもらって、荷物持ちをすることになった。というのも、方向まで同じ。彼女の自宅は俺の帰路に新しく建ったマンションらしい。
 遠慮なくドサリと鞄を乗せて、本当に他愛もない話をする道中。

 …女子と一緒に帰ることが今までなかったわけではないが、なんというか久しぶりにしても、何のアレもない。アレってのは、気恥ずかしさとか嬉しさとか、そういうの。適当にだらだらした感じが丁度いい。何度も言うが、このマネージャーは本当に女子じゃない。良い意味で。


「じゃあな」
「うん、ありがとうー」

 別れ際に彼女がへらりと笑って言った。

 また、よろしく頼むよ。


 その言葉で、ようやくよくわからない気恥ずかしさと嬉しさってのが一気に湧き出てきて、自転車を漕ぎながらちょっとだけにやけてしまった。自分が、ほんの少し、気持ち悪い。



31.03.2013-19.04.2013 拍手

 

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