あの子は自由人 | ナノ

頭、冷やしました

 次の日学校に行くのがちょっと恐いなんて。俺がキレられたってわけでもないのに、だけどどうしても気まずい感じは拭えない。赤也は学年も違うから気が楽で良いよな…いや、そうでもないか。そんなわけねーわ。
 昼ご飯の時も、苗字は屋上に現れなかった。柳は難しい顔で首を振った。そりゃそうだ。結局誰も苗字の扱い方を本当にわかってたわけじゃない。

 しかし嫌でも顔を合わせねばならない放課後の部活。緊張して普段より早く集合したレギュラーの前に、苗字は無表情で現れた。何か言おうとしている。ごくり、と誰かの生唾を飲む音が聞こえる。

「切原」

 赤也はまた何かされるんじゃないかと身体にぎゅっと力を入れる。赤也のせいで今日の苗字の頬にはべったりと湿布が貼ってある。制裁は致し方ない。

「……………ごめん」

 しかし、苗字はそう言うだけ。一同は拍子抜け。え、と間抜けな声を赤也は上げた。

「大切な人が苦しんでるのに。もう少し考えて行動すべきだったと、反省してる」

 みんなも、ごめんなさい。そう言って、彼女は頭を下げる。誰かが何かを発する前に、真田が前に出た。

「あの時俺も、いつものように冷静で幸村に関心もないようなおまえに腹が立った。だからと言って、どうしようもないこともわかっていたんだ。こちらこそ、すまなかった」

 そう、俺たちも悪かった。苗字が決して幸村くんを心配していないわけじゃないことは、毎日メールして、誰よりも見舞いに行っていることでわかってた。なのに、あの時、幸村くんをないがしろにされたようで腹が立ったんだ。
 苗字がようやくちょっとだけ笑ったので、みんなの緊張も解ける。本当、よかった。

「だけど、切原を蹴り倒したことだけは謝らないから」
「え゛」

 先に手出したのそっちからでしょう。それに関しては誰も止めはしなかった。むしろ自制出来ず女子を本気で殴った赤也が悪い。可哀想な奴。



 後日、全員が幸村くんに呼び出された。そこに苗字は来なかったけれども。
 病気が治る手術を受けることを決めた、と少し明るく笑って話してくれた。なんか、もう嬉し過ぎて泣きそうだ。幸村くんとまたテニスが出来るかもしれない。幸村くんが元気になってくれる!

「そういえば、苗字に思いっきり叩かれたんだけど。『お前のせいで殴られた』って。何か知ってるかい?」

 ただ一人、真っ青な赤也を除いては………。

 

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